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円安の影響を注視し内需の成長を盤石に

[社説]円安の影響を注視し内需の成長を盤石に
 
 
#社説 #オピニオン #経済
2024/7/1 19:05
 
円安で物価高に拍車がかかれば消費が下振れするリスクも(歴史的な円安を告げる市況ボード㊤と、商店街を訪れる人々=共同)
企業の設備投資を軸に内需拡大への歩みが続く半面、円安が個人消費を下押しする懸念もくすぶる。日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)からみえる日本経済の姿だ。

政府・日銀は円安が物価高に拍車をかけるといった経済への多面的な影響を見極め、着実な政策判断を積み重ねてほしい。

今回の短観では大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(業況を「良い」とした回答から「悪い」と答えた割合を差し引いた値)がプラス13と前回3月調査を2ポイント上回り、2期ぶりに改善した。

紙・パルプなど素材産業を中心にコスト高の価格転嫁が続いた。3月の指数を押し下げたダイハツ工業の認証不正問題は生産の回復で影響が和らいだ。だが、トヨタ自動車などで新たに発覚した認証不正には注意が必要だ。

大企業非製造業はプラス33とわずかに1ポイント低下した。悪化は4年ぶりだ。小売業では物価高で家計の買い上げ点数が減ったという。今後は急速に進んだ円安の影響で一段と値上がりが進む可能性がある。消費意欲が冷え込むリスクには目配りが欠かせない。

企業が強気の設備投資計画を維持しているのは心強い。2024年度は全規模全産業で前年度比8.4%増。3月調査の3.3%増から上方修正となった。

一部には人手不足の影響で工期の遅れもみられる。建設や物流を含めた関連業界は連携して業務遂行の効率を高め、企業の生産性向上へ取り組みを続けるべきだ。

企業は24年度の為替レートを1ドル=144円台後半と想定する。1日夕時点の161円前後よりも大幅な円高水準だ。今後、円安方向に修正が進む場合、輸出企業の採算向上が見込める半面、内需型企業はコスト高や消費停滞の心配が強まる。当局は注意深く分析し、適切な判断につなげてほしい。

重要なのは目先の需要刺激だけではなく、中長期の視点だろう。日本経済新聞社テレビ東京による最近の世論調査では、岸田文雄首相が打ち出した電気・ガス料金の補助の追加実施などについて「有効だとは思わない」とする回答が68%にのぼった。

家計に支出を促していくためには、賃金上昇の継続はもちろん、社会保障での負担と給付の抜本的な見直しも含め、将来の所得環境に本当の意味で安心感を持てるような対応が必要になるはずだ。