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国の責任断じた強制不妊判決

[社説]国の責任断じた強制不妊判決
 
 
#社説 #オピニオン
2024/7/4 2:00
 
国は早急な対応が求められる(3日、東京都千代田区
優生保護法のもと障害者らが不妊手術を強いられた問題で、最高裁大法廷は同法を「憲法違反」とし、国に賠償を命じた。裁判官15人の全員一致の判断だ。

同法の非人道性や、差別や偏見の温床となったことを考えれば、当然の判断だろう。国は裁判を起こしていない被害者を含め、全面的な補償・救済に向けた対応を急ぐべきだ。

優生保護法は1948年に議員立法で制定された。96年に母体保護法に改正されるまでの間、約2万5千人が不妊手術をされた。2018年以降、訴訟が相次ぎ、うち5件について判決が出た。

最大の争点は「時の壁」だった。不法行為から20年で損害賠償請求権がなくなるという除斥期間についての判例があるが、今回、これを変えた。「著しく正義・公平の理念に反し、到底許容できない場合には、除斥期間の主張が信義則に反し、権利の乱用として許されないと判断することができる」とし、被害から長期間がたった被害者も請求できるとした。

重視したのは、被害の甚大さだ。旧優生保護法の規定は憲法13条、14条に反し立法行為自体が違法であるうえ、国はだまして手術することなどを許容し積極的に推進した。旧法を改正した96年以降も国は手術は適法で補償はしないという立場をとり続けた。裁判が起きた後の19年になってようやく一時金支給法ができたにとどまる。

一時金は本人に320万円で、被害の実態に見合わないとの声は強い。認定も5月末時点で1110件にとどまる。一方、最高裁判決で確定した4件の高裁判決は本人に1000万円を超える慰謝料を、配偶者にも200万円を認めた。原告敗訴の1件も高裁に差し戻した。一時金との差は大きい。

大事なのは一人でも多くの被害者が適切な補償を受けられることだ。支給法の見直しなどで補償を受けやすい仕組みの議論が求められる。差別や偏見をなくす対策はもちろん、被害者への真摯な謝罪と反省がすべての前提となる。