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自衛隊は組織挙げて出直せ

[社説]自衛隊は組織挙げて出直せ
 
 
#社説 #オピニオン
2024/7/12 19:00
 
海上自衛隊のトップ、酒井良海上幕僚長の辞任は当然だ(9日、防衛省) =共同
一連の不祥事は防衛力の抜本的強化に冷や水を浴びせた。防衛省が12日、陸海空3自衛隊と内部部局の218人に及ぶ処分を発表した。国民の信頼回復が急務であり、組織を挙げて襟を正し、出直すよう強く求める。

どれも眉をひそめる内容ばかりだ。安全保障にかかわる「特定秘密」が内部で漏洩したケースが43件。主に護衛艦内で資格のない隊員に取り扱わせるなどした。米国との情報共有の前提で、同盟関係を揺るがしてはならない。

実態のない潜水などで不正に手当を受け取った潜水士のうち11人が懲戒免職となった。海自隊員22人が自衛隊基地内の食堂でルールに従わず代金を払わずに食事していたほか、内部部局でも幹部職員3人がパワーハラスメントでそれぞれ懲戒処分を受けた。

海自の潜水艦乗組員らへの川崎重工業の金品提供問題は、元検事らが独立した立場で調査する特別防衛監察が決まっているため今回の対象からは外れた。裏金づくりは長きにわたり組織ぐるみの慣行になっていた可能性がある。

不祥事の大多数は海自でみられた。海自トップの海上幕僚長の辞任は当然だろう。海自は外国との防衛協力の要になる。基本的な安全対策と順法意識の徹底から始めてほしい。同時に、不祥事を生んだ構造問題に切り込まなければ、根絶することはできまい。

閉鎖的な空間でガバナンスが外部から指摘されにくい。仲間意識に緩みやおごりはなかったか。古い体質がはびこっていないか。防衛省自衛隊全体で組織の問題点を徹底的に洗いだすべきだ。

国防や災害対応にあたる自衛隊への国民の信頼は厚い。不祥事が現場の士気に与える影響が気がかりだ。慢性的な人員不足も国家的課題として考えるときだ。

12日は2024年版の防衛白書も公表された。中国、北朝鮮、ロシアの軍拡を挙げ、日本にとって「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」との認識を繰り返した。防衛に隙をみせてはいけない。