[社説]好調な訪日観光の継続へ課題解決を
#インバウンド #社説
2024/7/21 19:05
京都で祭りを楽しむ外国人観光客
日本政府観光局(JNTO)が発表した2024年1〜6月のインバウンド(訪日外国人)は1778万人と過去最高を記録した。観光庁がまとめた4〜6月の訪日外国人消費額も2兆円を超え四半期としての最高額を更新した。
訪日客の増加は雇用や消費を生み地域経済への恩恵は大きい。今の好調を続けるため、課題にはきちんと対処していきたい。
政府には「20年に訪日客4000万人、消費額8兆円」というコロナ前に立てた目標がようやく視野に入るとの期待がある。ただし観光業界には米国や中国の景気や為替相場の不透明さから、政府より手堅く見積もる声も多い。
上半期の客数増や消費の好調は円安が追い風になっている。関連企業や自治体は、今の追い風が消えても観光客が来続けてくれるよう、魅力の磨き上げやサービス向上に一層力を入れたい。
訪日旅行の新たなネックが空港での燃料不足と人手の確保だ。外国人旅行者数で世界首位を続けるフランスは半数以上が陸路で入国する。空路に頼る日本の場合、航空便や空港機能の充実が欠かせない。燃料輸入や作業の自動化などで解決を急ぐべきだ。
消費の内訳にも課題がある。4〜6月の消費額を項目別にみると各種体験ツアーやガイド代、娯楽施設やスポーツ観戦の入場料などの「娯楽等サービス費」が構成比で3%にとどまっている点だ。23年の5%に比べ低下している。
外国人旅行者の消費額で世界首位の米国は、この項目が13%(23年)を占める。訪日観光の弱点のひとつはエンターテインメント分野だ。接客や解説に外国人や自動翻訳をうまく活用し、エンタメ関連の消費をもっと伸ばしたい。
大都市や有名観光地への集中とオーバーツーリズム(観光公害)も課題のひとつだ。世界経済フォーラムの旅行・観光開発ランキングで日本は前回(22年発表)、首位となった。しかし今年公表された最新版では3位に後退した。観光地の混雑などでサステナビリティー(持続可能性)に関する評価が下がった点が主因とされる。
日本各地にはまだ海外に知られていない魅力が豊富にある。観光資源の発掘と施設の開発整備、効果的な宣伝で旅行先の分散を進めることは、国全体の観光競争力を上げ、混雑を避け日本の良さをじっくり味わいたい旅行者の満足にもつながる。
【関連記事】