バンブーズブログ

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ハリス副大統領、冷静な対応を

[社説]米大統領選で保護主義を競うのはやめよ
 
 
#社説 #オピニオン #米大統領選2024
2024/7/30 19:05
 
米大統領選は民主党のハリス氏(左)と共和党のトランプ氏が戦う構図が固まりつつある=AP
世界経済と自由貿易を支える超大国が、新たなリーダー選びでどんどん内向きになるのが心配だ。3カ月後に迫った米大統領選を「自国優先」の保護主義を競う場にしてはならない。

民主党のバイデン現政権は8月1日、中国から輸入する製品にかける制裁関税を大幅に引き上げる。対象品目は電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品など広い範囲に及ぶ。

中国製EVの税率は現在の25%から100%へと4倍に跳ね上がる。鉄鋼・アルミ製品も0〜7.5%から一律25%になる。

中国製品に対する制裁関税は、もともとトランプ前政権が2018年に導入したものだ。中国が米国企業の知的財産権を侵害しているとして、国内産業の保護を名目とする米通商法301条に基づいて決めた。

バイデン政権が前政権の関税政策を強化するのは、共和党の大統領候補に選ばれたトランプ前大統領に対抗する狙いが透ける。

トランプ氏はすべての輸入品に一律10%、中国製品には60〜100%の新たな関税をかけるとしている。共和党の24年の政策綱領は「米国第一」の通商政策を貫くと明記した。

大統領選に向けて保護主義を競う構図は危うい。米中が新たな貿易戦争に突入すれば、世界経済に大きな影響が及ぶ。米国で輸入品の価格が上がり、インフレが再燃するおそれもある。

もちろん、中国が外国の知的財産権を侵害したり、巨額の補助金で過剰生産の問題を生み出したりしている面があるのは事実だ。

だからといって、米国の国内法である301条を使って一方的に制裁を科すのは問題が多い。世界貿易機関WTO)のルールにのっとって、中国製EVに追加関税を課した欧州連合EU)とは同列に扱えない。

バイデン政権が中国に対する半導体輸出規制の強化を検討しているとの報道もある。安全保障にかかわる最小限の規制にとどめる「スモールヤード、ハイフェンス(小さな庭に高い柵)」の原則を忘れてはならない。

日本にとっては、日本製鉄によるUSスチール買収の行方も気になる。トランプ氏は明確に反対を表明している。バイデン氏の撤退で民主党の新たな大統領候補に固まったハリス副大統領には、冷静な対応を求めたい。