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米利下げ検討でも市場急変の懸念は残る

[社説]米利下げ検討でも市場急変の懸念は残る
 
 
#社説 #オピニオン #為替・金利
2024/8/2 2:00
 
パウエルFRB議長は指標次第で9月に利下げに動く可能性を指摘した(7月31日のFOMC後の記者会見、米ワシントン)=ロイター
米国で高インフレの収束がようやくみえてきた。米連邦準備理事会(FRB)は7月末の米連邦公開市場委員会FOMC)で政策金利を5%超の高い水準で据え置いた半面、パウエル議長は記者会見で9月の次回会合での利下げもあり得ると明言した。

米金融政策の転換期待は市場の安定につながり、円安反転の要因にもなった。だが米国発の景気下振れや市場の急変のリスクは残っており、なお注意が必要だ。

FOMCの声明ではインフレのリスクのみを警戒する方針を改め、FRBの二大責務である「物価の安定と雇用の最大化」の双方に目配りする姿勢を示した。

物価上昇の勢いが鈍った半面、労働市場は減速している。インフレ抑制に集中してきた政策運営の軸足を雇用や経済の安定にも移す判断は妥当だ。FRBは利下げの検討に際して経済指標を吟味し、適切に時機を見極めてほしい。

7月公表の米物価指標の鈍化はFRBの利下げ観測を強め、これまで急激に進んだ円安・ドル高が反転する契機となった。

日本政府はこの機をとらえ、投機的な円売りが膨らんできた外国為替市場の安定を試みた。財務省は7月末、6月下旬からの約1カ月で総額5.5兆円強の為替介入を実施したと発表した。市場では7月11日と12日に円買い介入に動いたとみられている。

7月末の日銀の追加利上げとあわせ、円の上昇につなげた。

円安の是正は日本の家計や中小企業には望ましいとしても、急激な相場変動を伴うと経済には負荷がかかる。円の急速な戻りによって輸出関連株が大幅に売られ、株式市場を不安定にしている。市場の情勢を広く注視すべきだ。

米経済の軟着陸への道筋も盤石とはいえない。高金利の悪影響が企業や家計に遅れて出て、失業者が増える懸念もある。

米大統領選では返り咲きを狙う前職のトランプ氏が高関税政策を公約に掲げる。減税拡充や移民制限を含め、物価高に火をつけかねない政策が多いにもかかわらずインフレの阻止を訴え、同時に金融緩和やドル安も促す。そうした矛盾は市場の混乱の種になりうる。

米金融政策の転換期や米大統領選を控えた時期は経済や市場が不安定になりやすいとされる。日本の企業も米国発の急変動に備えつつ、成長に向けた地力を高める努力を着実に積み重ねてほしい。