バンブーズブログ

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農業が抱える課題を徹底的に洗い出して

[社説]農地を守り安保強める計画に
 
 
#社説 #オピニオン
2024/8/21 19:00
 
農地の保全は農政の責務
政府は10年先を見すえた農政の指針となる基本計画づくりに近く着手する。国民への食料供給を確かなものにするため、農業が抱える課題を徹底的に洗い出して計画を策定してほしい。

基本計画は食料・農業・農村基本法に基づいて作成する。同法は制定から四半世紀で先の通常国会で改正された。今回はそれを受けた初の計画になる。2025年3月をめどに閣議決定する。

改正基本法の最大の目玉は、食料安全保障の確保を理念として掲げた点にある。それを実現するうえで最も重要なのは食料の生産インフラの維持であり、その根幹にあるのが農地の保全だ。

日本の農地面積は23年で430万ヘクタールと、ピークの1961年比で3割減った。国民が必要とする食料を供給するにはただでさえ狭い農地の、これ以上の減少を食い止めるのは農政の責務だ。

焦点になるのが小麦や大豆、飼料用トウモロコシなど輸入に依存する穀物の増産だ。稲作と比べて作業時間が少なくてすむので、少ない人手で広い農地を守ることにつながる。食料自給率が向上するというメリットもある。

田畑の集約で大規模化が進んだのはこれまでの農政の成果だ。ただ農家が減り続ける中で、それだけで農地を守るのは難しい。規模の小さい農家を含め、多様な経営を生かす政策が要る。

ウクライナ戦争を機に肥料の確保という新たな課題も浮上した。肥料の輸出大国であるロシアが当事者になったことで国際相場が高騰し、肥料の多くを輸入に頼る日本の農業が圧迫された。

基本計画では下水汚泥に含まれる肥料の成分の活用や、国内原料で製造できる有機肥料の増産の道筋を示すべきだ。肥料の自給率の向上にも期待したい。

気候変動や軍事紛争などの不安定要因についても議論を深め、情報発信してほしい。リスクと必要な対策について国民が認識を共有することが、食料安保の確保にとって大切な一歩になる。