バンブーズブログ

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「敵は本能寺」 パウエル議長の本音とは


 
 
#豊島逸夫の金のつぶやき #コラム #マーケット
2024/8/26 12:12
ジャクソンホールでの「時は来たれり」という米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長の発言がドラマチックゆえ、もっぱら注目されたが、NY市場の投機筋は冷めている。パウエル氏は、日本流にいえば「時は来たれり。敵は本能寺にあり」とでも言いたげな様相なのだ。米金融政策の今後のシナリオの大筋が見えたところで、投機筋の視点は、11月5日の米大統領選挙に移っている。市場の材料としては、米金融政策から米財政政策への移行が既に意識されているのだ。景気下支え的な金融政策と、選挙公約として掲げられる積極財政政策のポリシーミックスが市場にどのような影響を与えるかが議論されている。

特に、トランプ氏有利であれば、「関税引き上げ、法人税引き下げ」と、財政規律の緩みを想起させる政策が並ぶ。「不法移民強制送還」も含めれば、インフレ的傾向も強いので、物価と雇用のデュアルマンデート(2つの責務)を背負うパウエル議長としては、利下げどころではない、という展開になりかねない。それゆえ「時は来たれり」と大見えを切った割には、実際の利下げスケジュールに関しては、「データ次第」として結局、何も語らなかった。

基本的に財政政策はFRBが関与するところではないものの、仮にインフレが再燃すれば、それが財政政策由来としても、FRBも連帯責任を取らされる羽目になろう。中央銀行の政治的独立性を無視するごときトランプ発言も含め、「敵は本能寺のトランプ氏にあり」という展開になるリスクが無視できないのだ。一方、トランプ氏も「利下げ・ドル安大歓迎」ながら、実際の政策は利上げ・ドル高に振れる矛盾をはらむ。このような不透明感こそ、投機筋が「ここは我々の出番」と意気込むところでもある。

一方、ハリス氏有利となれば、そもそも大きな政府、積極財政は民主党の伝統的な十八番(おはこ)であり、トランプ氏と大接戦になれば、人民迎合的なバラマキ的政策を持ち出す可能性も否定できない。

このような状況下で、ジャクソンホール会議を終え、9月2日のレイバーデー(労働の日)の連休が明ければ、一気に秋相場入りとなり、11月5日の大統領選挙日までマーケットに再び大混乱が起きるリスクがある。まずは雇用統計、9月の米連邦公開市場委員会FOMC)、そして日々メディアに流れるトランプ・ハリス発言、更に、目が離せない中東地政学的リスク。

ドル円のレンジとして1ドル=140円から155円まで、ボラティリティーの激しい値動きとなろう。ちなみに、日銀の植田和男総裁がジャクソンホール会議を欠席したことについて、NY市場で話題に挙げてみると「He is not missed」(彼の欠席を誰も残念に思っていない)と、すげない返事だった。

8月に過去最大の日経平均急落を見せつけられ、日銀が市場にサプライズを与えるような動きをするわけがなかろう、との見解でほぼ一致している。日本株については、今や「仕手株扱い」なので、東京市場の売買の7割前後を占めるとされる海外勢(特に短期系)は、日々の成り行きを、NYの深夜にもかかわらず、臨戦態勢で見守っている。中長期運用のファンド筋に関しては、特に日本株の運用比率を引き下げるような動きは見られない。決して派手ではないが、粛々と買いを進める流れである。

NISA(少額投資非課税制度)投資初心者たちは、シートベルトを低くきつく締め、乱気流に耐える「胆力」を鍛えねばなるまい。