[社説]次の首相は規律なき予算膨張に歯止めを
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2024/9/2 19:05
財務省は2025年度予算の概算要求を締め切った
2025年度の予算編成が本格化する。規律なき歳出の膨張に歯止めをかけ、新たな成長につながる「賢い支出」を徹底しなければならない。次の首相が避けて通れない課題だ。
財務省は8月末に来年度予算の概算要求を締め切った。一般会計総額は117兆円を超し、2年連続で過去最大となる。
110兆円を上回るのは4年連続だ。新型コロナウイルス禍で常態化した予算の水ぶくれが、抑制される兆しは今のところない。
来年度の予算編成は、これまでと大きく異なる環境下で進む。日銀が利上げを開始し「金利ある世界」が現実になっているからだ。
財務省は今回の概算要求で、元利払いにあてる国債費を29兆円弱と見積もった。過去最大だった24年度予算比で7.0%増える。日銀の利上げを受け、利払い費が大きく膨らむとみているためだ。
借金を返すのに必要なお金が増える一方、物価高もあって歳出を減らす余地は小さい。
防衛省は24年度予算比で7.4%増の8兆5千億円あまりを求めた。8兆円を超えるのは初めてだ。敵のミサイル発射拠点をたたく「反撃能力」の運用に使う衛星網の整備費などを計上した。
日本を取り巻く厳しい安全保障環境を考えれば、防衛力の増強に必要な予算を投じるのはやむを得ない。ただ、無駄な要求が本当にないかは徹底的に検証すべきだ。防衛省・自衛隊の不祥事が相次ぎ、国民が不信の目を向けているときだけになおさらだ。
厚生労働省の要求額も約34兆3千億円で、過去最大となった。高齢化に物価高が重なり、予算の膨張が止まらない。デジタル化で経費を抑えると同時に、医療制度などの改革で歳出を抜本的に減らす努力を怠ってはならない。
政府は今回の概算要求でも、各省庁が重要政策と位置づければ具体的な必要額を示さなくてよい「事項要求」を認めた。規律が働きにくく、要求額が青天井になりかねない仕組みだ。
年末に向けた予算編成は無駄の多いバラマキ型の歳出を徹底的に絞り、半導体や脱炭素といった成長分野への「賢い支出」に振り向ける作業になる。政治のリーダーシップが何よりも重要だ。
財政の健全化と成長をどう両立させるのか。事実上、次の首相を決める場となる自民党総裁選で各候補に問いたい。