[社説]後戻りしない日韓へ次の首相も努力を
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2024/9/7 2:00
岸田首相と尹大統領㊧のもとで日韓関係は大きく改善した(6日、ソウル)=AP
日本の安全や自由貿易などが脅かされる厳しい国際環境で、安定した隣国関係は何より欠かせない。外交の基軸である米国の同盟国同士ならなおさらだ。政治リーダーは党首選や新首相誕生を機に、日韓の戦略上の意義にあらためて思いを致すべきである。
岸田文雄首相と尹錫悦大統領が6日、ソウルで会談した。第三国での緊急事態の際に自国民の退避で協力すると確認し、双方の入国手続きの円滑化の検討でも合意した。2人の会談は12回にのぼる。歴史問題を抱える日韓の場合、首脳外交が特に重要で、近く退任する岸田氏が友好の機運を後継首相につなげる狙いは評価できる。
戦後最悪ともいわれた日韓関係は大きく改善した。元徴用工問題をはじめ尹氏の指導力が大きいのは確かだが、岸田氏も尹氏との信頼関係を深め、相手の国を行き交うシャトル外交の再開を含めて対韓外交を立て直した。
2023年の広島での主要7カ国(G7)首脳会議に合わせて韓国人原爆犠牲者慰霊碑を2人で訪れたのは象徴的な光景だった。同年にはバイデン米大統領を交えた3首脳が米キャンプデービッドに集い、安保や経済などでかつてない強固な日米韓関係を誓った。
北朝鮮などの脅威をにらんだ自衛隊と米韓両軍の合同演習が加速し、日韓は防衛交流の再開でも合意した。ともに海外へのエネルギー依存度が高く、水素やアンモニアなどの協力の議論も進んでいる。この好循環を勢いづけたい。
韓国では日本企業に賠償を命じる元徴用工判決が続く。韓国の財団が肩代わりする韓国政府の解決策は受け入れを拒否する原告が残り、財団の基盤も心もとない。最大野党が対日政策を標的にしているのは気がかりで、尹氏には国内をまとめる努力を求める。
日韓は粘り強い対話によって軟着陸をめざす外交が復活した。「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録やLINEヤフーの資本関係をめぐる問題は典型だ。知恵を出し合って接点を探ってほしい。
今年上半期の訪日外国人数で国・地域別のトップは韓国だった。日本でもK-POPなど韓国文化への親しみから韓国語を覚える若者らの姿がめだつ。
米国でバイデン氏が今期限りで退き、日韓が力を合わせる重要性が高まる。来年は国交正常化60年を迎える。後戻りしない関係づくりへ次の首相の役割は大きい。