[社説]ベネズエラの野党排除を憂う
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2024/9/15 19:00
亡命したベネズエラの野党候補ゴンサレス氏㊧とスペインのサンチェス首相(12日、マドリード)=スペイン政府提供・AP
7月のベネズエラ大統領選で現職のマドゥロ大統領と争った野党候補ゴンサレス氏が、スペインに亡命した。現職に選挙不正があったとして勝利宣言に異議を唱え、政権側が扇動などの疑いで逮捕状を出していた。民主主義を脅かす野党排除の圧力を憂える。
現職は長期政権で独裁色を強めてきた。ゴンサレス氏は「圧力と脅し」を受けて出国したと説明し、米州機構(OAS)は「強制された亡命」だとしてベネズエラの政権を批判している。
ベネズエラの選管は早々に現職の3選を認めたが、開票結果の詳細な発表はいまだになく、選管の対応は疑念が尽きない。野党側は独自の集計結果の一部を公開し、ゴンサレス氏の圧勝を主張している。国民も反発し、政権への抗議デモが激化して治安部隊との衝突で死者を出す事態になった。
ゴンサレス氏を出国に追い込んだのは批判を封じるためだろう。現職が自らの続投を既成事実にする思惑が透けてみえる。ロシアや中国は反米のマドゥロ氏を支える姿勢だが、国際社会は黙認すべきでない。
ベネズエラは世界最大の原油埋蔵量を持ちながら、チャベス前大統領から四半世紀続く反米左派体制の下で経済が著しく悪化した。国民は困窮し、770万人が国外に脱出したとされる。
今回の混乱で、米国などに逃れる避難民がさらに増える可能性がある。移民問題が米州全体に影を落とすのは、11月の米大統領選で大きな争点になっていることをみても明らかだ。
ベネズエラの経済破綻と混乱は硬直化した強権体制の失敗を物語る。政権交代を願う民意は大規模デモに表れている。有権者の選挙結果への疑念に答えず、対抗馬を亡命に追いやる政権の動きは民主主義を踏みにじるものだ。
日本は民意を尊重するよう重ねて求めており、こうした姿勢は妥当だ。米欧などとともに、公正で透明な選挙を訴え続けることが重要である。