バンブーズブログ

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[社説]台湾総統選は民主主義の底力を示す場だ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/26 2:00
 
台湾総統選に立候補した頼清徳氏(左)、侯友宜氏、柯文哲氏(右)
中国の圧力と干渉に惑わされず、民主主義の底力を示してもらいたい。台湾の総統選挙が2024年1月13日の投開票に向け、大詰めを迎える。

立候補の届け出は24日に締め切られた。与党・民主進歩党民進党)の頼清徳副総統に、最大野党・国民党の侯友宜氏と第3政党・台湾民衆党の柯文哲氏がそれぞれ挑む構図が固まった。

世論調査では、現職の蔡英文総統の路線を引き継ぐ頼氏が一貫してリードしている。

頼氏は「一つの中国」を認めず、米国と連携して中国に対抗する姿勢を前面に出す。米国に太いパイプを持つ蕭美琴・前駐米代表(大使に相当)を副総統候補に据え、選挙戦を有利に進める。

一方、野党の2候補は「民進党政権が続けば戦争になる」と訴え、中国との対話路線を掲げる。

国民、民衆の両党は野党が分裂したままでは頼氏に勝てないとみて、いったんは候補の一本化で合意した。しかし侯氏と柯氏のどちらを総統候補に立てるかで折り合えず、野党連合は結局、幻に終わった。

台湾統一をめざす中国は「独立派」とみなす民進党の政権が続くのを阻もうと躍起だ。

台湾海峡の軍事的な緊張をあおるだけではない。SNSなどを駆使し、民進党に不利な情報を台湾社会に浸透させる世論工作を仕掛けているとの指摘が絶えない。野党連合がいちど浮上した背後にも、中国の関与があったとの臆測がくすぶる。

鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者である郭台銘(テリー・ゴウ)氏が総統選への出馬を表明したあとには、同社の中国拠点が税務調査を受けた。

野党票の分散を望まない中国共産党による露骨な嫌がらせとの見方が有力だ。郭氏は最終的に立候補を取りやめた。

中国の習近平政権はこうした干渉が、かえって台湾住民の対中不信を強め、逆効果にしかならないことを知るべきだ。

8年続いた民進党政権には汚職の疑惑も浮かぶ。政権交代を期待する世論は根強く、総統選の行方は最後まで予断を許さない。

台湾住民の多くは「独立」でも「中国との統一」でもない「現状維持」を望んでいる。次の総統はだれがなっても、中国との過度な摩擦は避け、安定した関係を築いてほしい。