バンブーズブログ

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石破政権の構想と決意をみせてほしい。

[社説]石破首相の構想と決意が伝わってこない
 
 
#社説 #オピニオン
2024/10/5 2:00
 
衆院本会議で初の所信表明演説に臨んだ石破首相(4日)
石破茂首相が国会で初の所信表明演説に臨んだ。自民党派閥の裏金問題などで国民の政治不信を招いたと反省し「国民からの信頼を取り戻す」と繰り返し訴えた。

対象の議員一人ひとりと向き合い、自らも説明責任を果たすというが、衆院解散は9日に迫っている。首相は自民党総裁選などでも「国民は納得していない」と認めており、同党が生まれ変わったと国民にみなされるまでの道は険しいと感じざるを得ない。

経済政策では「デフレ脱却を確かなものにする」と物価上昇を上回る賃上げの定着を掲げた。「資産運用立国」を引き継ぎ産業に思い切って投資する「投資大国」をめざす。「経済あっての財政」「成長と分配の好循環」を含めて岸田文雄前政権の踏襲が際だつ。

足元の物価高対策は「低所得者世帯への支援」を強調したが、一律のバラマキ型に終わらないよう無駄を省くワイズスペンディング(賢い支出)に徹すべきだ。

外交・安全保障の基軸となる日米同盟を一層強化するとしたのは当然である。同志国のうち真っ先に韓国を挙げ、日韓の緊密な連携が「双方の利益にとって極めて重要だ」と従来より踏み込んだ。

日本人学校男児刺殺事件で中国に責任ある行動を強く求めた。同時に、あらゆるレベルでの意思疎通を重ねて「建設的かつ安定的な関係」の構築へ日中双方が努力すべきだとした。中国の軍事圧力への抑止力を強めつつ、対話も重視する方向性は評価できる。

日米安保条約の「非対称性」を改める見直しや、アジア版の北大西洋条約機構NATO)構想といった持論には触れなかった。

首相就任後に現実を見据えた政策に軌道修正する判断は妥当だ。ただ安全運転に切り替えたのか、交付金の倍増目標を据えた地方創生や防災、沖縄などは思い入れがにじむものの、全般的に政権の独自色がかすみ、何を本当にやりたいのかがわかりにくくなった。

国家課題の少子化対策やエネルギー政策も差し障りない表現にとどまった。持続可能な防衛力や社会保障の財源確保へ歳出削減に努力し、そのうえで国民に負担を求める可能性があることを率直に認めるのもリーダーの責務だ。

5度目の挑戦でつかんだ首相の初演説としては物足りない。正論や筋論を国民に率直に語りかけるのが持ち味のはずだ。石破政権の構想と決意をみせてほしい。