[社説]危機防ぐ外交・安保の覚悟はあるのか
衆議院選挙2024
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2024/10/18 2:00
世界で広がる危機に国連が本来の役割を果たせていない(米ニューヨークの国連本部)=国連提供・共同
世界で紛争や危機が広がる。抑止力強化の必要性は論をまたないが、平和的な解決は対話でのみなし得る。複雑な脅威に持続可能な防衛力と外交力をどう高めていくか与野党は道筋を示すべきだ。
各党の衆院選公約は掛け声や抽象論がめだち、政治の覚悟が伝わってこない。
中国が台湾を囲む形で大規模な軍事演習を実施した翌日の15日に北朝鮮が韓国へとつながる道路を爆破した。日本周辺の緊張が高まっている。
自民党と同様に立憲民主党も日米同盟を外交・安全保障の基軸にすると明示した。一方で立憲民主党と共産党は沖縄県米軍普天間基地の名護市辺野古移設工事の中止を訴えて自民党と対立する。
日本維新の会はサイバーや宇宙も含む「積極防衛能力」の整備を、国民民主党はエネルギー、食料、半導体などの国内調達を増やす総合的な経済安全保障を唱える。
5年間に43兆円の巨費を投じる防衛力の強化へ政府は2027年度以降に1兆円強を増税で賄う方針だ。石破茂首相(自民党総裁)は増税の開始時期を年内に決着させる考えを示す。責任ある政治の姿として妥当である。
もっとも国防が喫緊の課題であるなら、与野党は徹底的な無駄の削減とあわせて負担のあり方を国民に説く必要がある。立憲民主党は「防衛増税は行わない」としたが「急増した防衛予算を精査する」だけでは無責任ではないか。
首相が「必ず実現したい」と意気込む日米地位協定の改定について自民党は「あるべき姿を目指す」との表現にとどめた。アジア版NATO(北大西洋条約機構)構想などとともに国民への丁寧な説明や調整が欠かせず、内外に混乱を招かないようにすべきだ。
ノーベル平和賞に日本原水爆被害者団体協議会が選ばれた。日本は唯一の戦争被爆国として核軍縮への果たすべき責務がある。野党や公明党が求める核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加は現実的で、核抑止との両立をめぐって議論を深めるときだ。
外交の取り組みが総じて物足りない。大国間の対立により国連が本来の役割を果たせず、日本は中国をはじめ戦略外交の立て直しが急務だ。票にならないといわれてきた外交・安保こそ国会議員の仕事だと肝に銘じてほしい。