バンブーズブログ

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[社説]黒田日銀の教訓生かし経済の再生急げ


 
 
#社説
2023/3/17 19:05
金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(10日、日銀本店)=代表撮影
日銀は9〜10日の金融政策決定会合で大規模な金融緩和策の維持を決めた。4月8日に任期が切れる黒田東彦総裁にとっては最後の定例の決定会合で、会合後に記者会見した黒田氏は2013年の就任からの10年を振り返り「金融緩和は成功だった」と総括した。目標の2%の持続的な物価上昇は実現せず残念だとも述べた。

異例の緩和策は市場への副作用も目立ってきた。過度な金融政策への依存は構造問題の先送りや財政規律の緩みも招いた。国会が10日に次期日銀総裁への起用を承認した植田和男氏には大局的でバランスある金融政策を求めたい。

黒田氏は就任直後、大量の国債購入を通じた「異次元緩和」で2年で2%の物価上昇を実現すると約束した。16年にはマイナス金利政策や国債買い入れ長期金利を抑えるイールドカーブ・コントロール(長短金利操作)を導入した。だが物価は上向かなかった。

一方、日銀による国債保有割合は約1割から5割超に膨らみ、経済・金融情勢を映すべき市場の機能は大きく低下した。金融政策に頼った政府は成長戦略を怠り、将来性の乏しい、いわゆるゾンビ企業の延命などが経済の活力をそいだとの声もある。日銀による国債の大量買い入れと低金利を背景に政府も大盤振る舞いを続け、財政悪化にも拍車がかかった。

むろん低金利は銀行の融資増を通じ前向きな投資も促した。円安や株高という緩和策の副産物が経済を支えたのも無視できない。

プラスの効果が勝ったと黒田氏が強調するゆえんだが、ここへきて世界的なインフレや金利上昇が日本にも波及し状況は一変した。日銀による長期金利の抑制は行き詰まるとみた投機筋が国債を売り浴びせる局面が増え、政策のマイナス面がいよいよ目立ってきた。

黒田日銀の教訓の1つは、補助役にすぎない金融政策への過度な期待は禁物という点だ。企業が技術革新や新たな需要の創造で生産性を引き上げ、政府も構造問題にメスを入れて環境を整えてこそ、金融政策は力を発揮できる。

日銀の次期体制はその教訓を糧に政府や市場と十分に対話し、先々もにらんだ広い視野で政策運営に努めてほしい。米国では急な利上げの余波でシリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻し、金融システムに動揺が広がる。慎重に政策を運営し不要な混乱を避けるべきなのはいうまでもない。