バンブーズブログ

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[社説]金融不安の連鎖を緊密な国際連携で防げ


 
 
#社説
2023/3/19 2:00
クレディ・スイス・グループの経営不安による混乱下でも、ユーロ圏の0.5%利上げを決めた欧州中央銀行のラガルド総裁(3月16日、フランクフルト)=ロイター
スイスの金融大手、クレディ・スイス・グループの経営不安が高まった。中央銀行による資金供給策などで混乱の収拾を探るが、同行や他の欧州金融機関の健全性に市場は疑心暗鬼になっている。

シリコンバレーバンク(SVB)破綻の余波が、欧州の金融システムも揺るがし始めた。世界の金融当局は緊密な連携で不安の連鎖を防いでほしい。

クレディ・スイスは高リスク取引の失敗などで2022年12月期まで2期連続の最終赤字に陥った。SVB破綻で信用不安が加速し、筆頭株主が追加出資を拒む方針も伝えられ株価が急落した。

クレディ・スイスは16日、スイス国立銀行中央銀行)の流動性支援で最大500億スイスフラン(約7兆円)の調達を表明した。それでも不安は収まらず同国最大手銀による買収の可能性も伝えられる。

米欧の中央銀行にはインフレ阻止と金融システム安定を両立する細心の手綱さばきが求められる。

米テック企業の潤沢なマネーを受け入れたSVBの破綻と、クレディ・スイスの経営不安の構造は違う。だが、米欧の急速な政策金利の引き上げで保有債券の含み損が拡大し、収益悪化と急速な顧客離れが進む環境は共通だ。

スイスと隣接するユーロ圏の欧州中央銀行(ECB)は16日、政策金利を0.5%上げて3.5%にすると決めた。インフレ抑制を優先したが「市場の緊張を注意深く監視している」(ラガルド総裁)と、金融安定にあらゆる手段を使う構えも強調した。

米中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクの資金繰り不安も浮上した。米大手11行が合計4兆円規模を預金する支援策の表明後も動揺は続く。米連邦準備理事会(FRB)が22日まで開く政策会合の決定は、世界の金融と経済の先行きに重大な影響を及ぼす。

08年の金融危機を受け、世界の銀行監督当局はグローバルな金融システムに影響が及ぶ重要な銀行を特定し、自己資本の厚みや健全性を厳しく監視している。クレディ・スイスもその一つだ。同行の危機は金融安定の枠組みへの信頼も揺るがしかねない。

政府・日銀も17日、SVB破綻などの日本の金融への影響を巡り協議した。各国当局による緊密な監視と意思疎通が欠かせない。十分な流動性の供給はもちろん、緊急事態では資本増強を含む迅速な対応を準備しておくべきだ。