バンブーズブログ

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[社説]少子社会から脱却へもっと速度と深さを


 
 
#社説
2023/3/31 19:05
若い世代の希望がかなう社会に変わっていきたい
少子化問題に取り組む意気込みは確かだろう。ただし、切り込んでいくスピードと深さは、まだ十分とはいえない。

政府は少子化対策の「たたき台」をまとめた。近く岸田文雄首相をトップとする新たな会議を立ち上げ、6月の骨太の方針までに財源を含めさらに検討するという。

並ぶのは、さまざまな拡充メニューだ。児童手当は所得制限の撤廃と高校生までの支給、多子世帯への加算が盛り込まれた。保育所は、働いていなくても柔軟に利用できるようにする。子どものいる社員が短時間勤務できる期間を延ばし、2歳未満では収入減を補う給付も新設する。予算不足から長年、見送られてきた保育所の職員配置の改善も、盛り込まれた。

ただ、これらには巨額の財源が必要となる。国債でまかなうことになれば、未来の子どもたちへのつけ回しになりかねない。想定される効果を踏まえて政策に優先順位をつけるとともに、国民にどう負担を求めるのか丁寧な説明が欠かせない。

たたき台は、今後6、7年が「ラストチャンス」と強調した。集中的に取り組む「加速化プラン」は2024年度からの3年計画というが、対策は時間との勝負だ。できるだけ前倒しでスタートさせるべきだ。

なにより社会の構造的な問題により深く踏み込みたい。少子化の最大の要因は非婚化・晩婚化だ。経済基盤の弱さが若者の結婚や子どもを持つ希望を阻んでいる。

いったん非正規になるとなかなか抜け出せない硬直的な労働市場や、正規・非正規の大きな格差、旧態依然とした長時間労働などを根本から見直す必要がある。取り組みが目立って遅れているだけに、官民あげて急ぐべき課題だ。

「育児は女性」という古い考え方も、なお根強く残る。女性の負担感を高め、少子化の大きな要因ともなってきた。たたき台は男性の育休などの「共働き・共育て推進」をうたうが、まわりに古い意識が残っていては難しかろう。

社会全体の意識改革と、男女の分業を前提にした税・社会保障制度などの見直しをどうはかるか、もっと具体策を示してほしい。

「今後5年で流れを変える」「集中取組期間」といった強い言葉は、過去の計画でも繰り返しうたわれてきた。実効性のある取り組みで、今度こそ若者の希望がかなう社会に道筋をつけたい。