バンブーズブログ

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[社説]世界経済の分断を防ぎ協調立て直せ


 
 
#社説
2023/4/14 19:05
G20財務相中央銀行総裁会議は5回連続で共同声明を採択できなかった(13日、会議終了後に記者会見するインドのシタラマ財務相㊧とインド準備銀行のダス総裁)=AP
ワシントンで開いた20カ国・地域(G20財務相中央銀行総裁会議は議論の成果を示す共同声明を出せずに閉幕した。ロシアのウクライナ侵攻後、5回連続で共同声明が出ていない。議長国インドのシタラマ財務相はとりまとめの調整すらしなかったという。

世界の国内総生産GDP)の85%を占めるG20が統一した見解を作れない現状は憂慮される。世界経済は高インフレ、高金利、高水準の債務という3つの「高」に直面し、金融の安定にも不安が残る。緊密な意思疎通と機動的な政策協調の確立が急務だ。

3月に米中堅地銀が破綻し、欧州のクレディ・スイス・グループの救済が決まって以降、財政・金融当局の責任者が初めて顔を合わせた。米欧の中央銀行がインフレの克服へ急速な金融引き締めを進め、景気の減速や金融部門の動揺などの副作用が起きている。

G20は世界経済の課題や最近の金融安定へのリスクを議論したものの、具体的な対処策で何ら道筋を示せなかった。侵攻の暴挙に出たロシアや同国に同調する中国と先進国などの溝は埋まらない。

並行して会議を開いた主要7カ国(G7)財務相中央銀行総裁は世界経済の見通しの不確実性を認め「グローバルな金融システムの安定と強じん性を維持するために適切な行動をとる用意がある」と声明を出した。経済の異変の注視と迅速な協調が不可欠だ。信用不安が急速に広がる時代の金融規制も再点検が求められる。

新型コロナウイルス禍もあり、ドル建て債務が膨らんだ途上国はドル高や金利高で返済難に苦しむ。G20議長国のインドは途上国債務の「迅速な処理が必要」との認識で一致したと説明した。

だが最貧国などの債務再編は、巨大債権国の中国の関与が欠かせない。G7議長国の日本は債務返済に窮したスリランカの債権国会議を立ち上げたが、鈴木俊一財務相は中国の参画に現時点で「期待」を表明するのにとどまる。

新興国や途上国の苦境を打開し、世界のサプライチェーン(供給網)に組み込む国際協力を深めるべきだ。ウクライナ危機や米中対立など火種は多いが、貿易や投資の流れを鈍らせる世界経済の分断は誰のためにもならない。

5月にG7の首脳会議(サミット)を主催する日本はG20の機能不全を補完し、政策協調を立て直す重責を担っている。