2023年4月22日 19:00
AFPBB News
【AFP=時事】アルメニアの首都エレバンのオペラ座近くで、言語学者のアルトゥール・サルグシャンさん(26)は、ロシアは頼りにできないパートナーであり、アルメニアは他の「同盟国」を探すべきだと語った。
【写真】ナゴルノ係争地、緊張再燃 アゼルバイジャン活動家が道路封鎖(2022年12月)
サルグシャンさんは「アルメニアが集団安全保障条約機構(CSTO)を抜け、ロシアの影響下から離れる日を夢見ている」と話した。CSTOはロシアが主導し、旧ソ連諸国で構成される。
宿敵アゼルバイジャンと衝突した時も、「窮地に陥ったアルメニアを、ロシアとCSTOは助けてくれなかった」と、サルグシャンさんは強調した。
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1991年のソ連崩壊以降、人口約300万人のアルメニアはロシアの軍事的、経済的支援に依存してきた。国内にはロシア軍の基地があり、ロシア語話者も多い。
しかし今日、多くのアルメニア人が、トルコの支援を受けるアゼルバイジャンからアルメニアを軍事的に守るという責任を縮小しているロシアを、許せないと語る。
昨年12月中旬、アルメニアと係争地ナゴルノカラバフ(Nagorno-Karabakh)をつなぐ唯一の道路をアゼルバイジャンが封鎖すると、ロシアへの不満はさらに高まった。そのロシアは現在、ウクライナとの戦争で身動きが取れなくなっている。
エレバン在住の英語教師アルピネ・マダリャンさん(42)は「アルメニアは小国だ。本当に支援してくれそうな西側陣営に加わる必要がある」と話した。「CSTOを脱退すべきだ。彼らは助けてくれないし、味方でもない」
アルメニアは今年1月、国内で予定されていたCSTO合同軍事演習の実施を拒否した。ただ、これまでのところ脱退は否定している。行方は不透明で、CSTOを抜ける余裕はないとみる専門家も多い。
6週間で数千人の犠牲を出した2020年秋の衝突の際、トルコはアゼルバイジャンを外交的・軍事的に支援した。一方、ロシアは外交的な介入にとどまり、アルメニアは孤軍奮闘を余儀なくされた。
■「反ロシア感情」の高まる可能性も
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は停戦合意を仲介したが、アルメニアは、数十年にわたり実効支配してきたナゴルノカラバフの一部を失うことになった。ロシアは不安定な停戦を維持するため、平和維持部隊を派遣した。
この停戦合意は、アルメニアでは国辱と受け止められた。
政治アナリスト、ビゲン・ハコビャン(Vigen Hakobyan)氏は「アルメニアのロシアへの信頼度は歴史的な水準にまで低下している」と指摘した。「失望感は極めて強く、いずれ反ロシア感情が高まる要因になり得るほどだ」
別の専門家、ハコブ・バダリャン(Hakob Badalyan)氏によると、アルメニアのエリート層の大多数は反ロシアだ。
■「実利的な判断」
アルメニア人住民が多数派を占めるナゴルノカラバフ地域では、ロシアの平和維持部隊について、アゼルバイジャンから自分たちを守ってくれる唯一の存在だとみられている。しかし、複雑な思いを抱く人も多い。
匿名を条件にAFPの取材に応じた56歳の男性は「ロシア平和維持部隊の存在は、アルメニア人を皆殺しにし、追放したいと思っているアゼルバイジャン人に対する抑止力となっている」と話した。
ただし、「一つの村と重要な軍事拠点が一晩のうちにアゼルバイジャン軍に制圧されたのを見て、われわれはロシアの誠実さに疑問を持ち始めた」と打ち明けた。
アルメニア・アゼルバイジャン両軍は今も頻繁に衝突している。今月11日には国境沿いで戦闘が起き、両軍合わせて7人の兵士が死亡した。
独立系ロシア人アナリスト、コンスタンチン・カラチェフ(Konstantin Kalachev)氏はAFPに対し、ロシアはアルメニアをめぐり、アゼルバイジャンを支援するトルコとの関係を損ないたくないと考えているとの見方を示した。
カラチェフ氏は「ロシアは実利的な判断からアルメニア側に付かなかった」「いずれにせよ、アルメニアには頼れる国がない」と語った