バンブーズブログ

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[社説]プーチン氏の危険な愛国主義


 
 
#ウクライナ侵攻 #ヨーロッパ #社説
2023/5/11 2:00
戦勝記念日に演説するロシアのプーチン大統領 (ロイター)
ロシアのプーチン大統領が9日の第2次世界大戦の対ドイツ戦勝記念日に演説し、ウクライナへの軍事侵攻の続行を明言した。他国への侵略を国家防衛の戦いにすり替え、愛国心に訴えて正当化しようとするのは容認できない。

ウクライナ軍が大規模な反転攻勢への準備を急ぐ中で、プーチン氏が演説で軍事侵攻にどう言及するかが注目された。停戦や和平を口にすることはなく、「わが祖国の運命を決する戦い」などと強硬な発言に終始した。

ロシアの対独戦勝記念日ナチスドイツへの勝利を祝うだけでなく、ソ連だけで2600万人以上に達した犠牲者を悼み不戦の決意を新たにする日だ。だが前年の演説にあった「世界規模の戦争の恐怖を繰り返さない」との言葉も消えた。首をかしげざるをえない。

プーチン氏は2000年の大統領就任以来、愛国主義を国政の柱とし、政権への支持拡大に利用してきた。今回の演説でも「祖国への愛」を訴えたが、領土拡大と欧米との対立により愛国心を高めようとするのは誤りであり、これ以上繰り返してはならない。

国民もその危うさに気づき始めている。予備役動員を逃れ国外に出た人は推計30万人以上に達する。独立系調査機関の世論調査では、半数以上が和平交渉の開始に賛成した。プーチン氏はこうした民意を直視しなければならない。

欧米の軍事支援を受けたウクライナの反攻が始まれば、プーチン政権は内外で苦境を深めることになる。国際社会は反攻の機を逃さず、ロシアに対して侵攻を断念し、無条件の即時撤退に応じるよう圧力を一段と強めるべきだ。

ロシアの愛国主義は日本にとっても脅威だ。プーチン氏は演説で「日本の軍国主義と戦った中国兵士の偉業を記憶し、敬意を表する」と第2次大戦の歴史認識で中国と共闘する姿勢を示した。一方的な国際秩序の変更へ連携を強める中ロに対抗するためにも、23年の主要7カ国(G7)議長国の日本には指導力を発揮してほしい。