バンブーズブログ

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[社説]農業基本法の改正で緊急時への備えを


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/2 2:00
日本は輸入に頼る作物の国内増産が急務になっている
農林水産省食料・農業・農村基本法の改正に向け、緊急時の食料増産などを柱とする「中間取りまとめ」を公表した。国民に安定して食料を供給し続けるために、不測の事態に対する備えを確かなものにしてほしい。

現行の基本法は1999年に制定された。食料自給率の向上を目指したが実現せず、気候変動や新型コロナウイルスの流行、ウクライナ危機など食料確保が脅かされる事態がこの間に起きた。

こうした状況の変化を受け、農水省は法改正を議論し始めた。2024年の通常国会への改正案の提出を予定している。

焦点の一つは農産物輸入が急減したときの対応だ。中間取りまとめは、緊急時に政府全体で意思決定する体制を整え、不足が予想される農産物を増産できるようにすることを課題に掲げた。

どこでどんな作物を作るべきかを、政府が生産者に指示することなどを念頭に置いている。政策で農業を支援しているのは食料確保が目的であり、いざというとき国民に不可欠なものに生産をシフトするのは当然の措置だろう。

買い占めの防止や流通規制などもテーマになる。混乱を避けるため、行政命令を発動する基準を明確にするとともに、生産や流通の制限で不利益を被る業者への補償も用意しておく必要がある。

国民一人ひとりの「食品アクセス」の改善に、平時から取り組むことを提起した点は評価できる。日本は大量の食品を廃棄する一方、生活困窮世帯には食べ物が十分に行き届いていない。

フードバンクなどが食品の寄贈を受け、困窮世帯に提供しているが、運営団体の資金が足りないことも少なくない。政府や自治体が日ごろから団体と連携し、支援を充実させるべきだろう。

小麦や大豆、飼料作物など輸入に頼る作物の増産も盛り込んだ。輸入に支障が生じたときの影響を和らげるためには欠かせない。そこで必要になるのが、水田の一部の畑への転換だ。食料安全保障の確保にとって必須の措置と位置づけ、基本法の改正をきっかけに政策を手厚くすべきだ。

食料の余剰を前提としてきた農政から、不足も視野に入れた農政に変わることがいま求められている。国民にとって重要なテーマであり、幅広い意見を参考にしながら危機に対応できる新たな食料政策を構築してほしい。