バンブーズブログ

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社説]強制不妊の被害救済を今こそ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/2 2:00
優生保護法下の強制不妊手術を巡る訴訟の控訴審で「不当判決」と書かれた紙を持つ原告側弁護士(1日午後、仙台高裁前)=共同
優生保護法のもとで不妊手術を強いられた女性2人が国に損害賠償を求めた訴訟で、仙台高裁は一審判決に続いて、女性側の訴えを退けた。

優生保護法は「不良な子孫の出生防止」を掲げ1948年に制定された。手術の規定を削除し母体保護法に改正されたのは96年になってからだ。本人の同意のない手術まで認めており、旧法のもと手術をした人は、約2万5千人もいる。

最大の焦点は、不法行為から20年たつと損害賠償請求権がなくなる「除斥期間」だった。旧優生保護法の規定が違憲であることや、手術が全国的、組織的に実施されて優生思想の普及が図られたという当時の状況は、仙台高裁も認めている。

それでもなお、被害者が手術から20年のうちに裁判を起こすことが「およそ不可能であり機会がなかったとまではいえない」と判断した。仮に法改正の96年を起点にしたとしても、提訴までに20年が過ぎているとも述べた。

被害者にとっては、厳しい判断だろう。同様の訴訟は全国で起きている。当初はやはり時の壁により請求棄却が続いたが、22年2月の大阪高裁判決以降、国に賠償を命じる判決が7件も出ている。「著しく正義・公平の理念に反する」として除斥期間の適用を制限したためだ。

障害者への差別意識は、旧優生保護法の存在によって社会に広く根付いた。旧法改正後も国は長年、救済措置をとらなかった。

訴訟を機に19年、被害者に一時金を支払う制度ができたが、認定は約1千人だけだ。根強い差別を恐れ、声を上げられないでいる人もいるだろう。そもそも一時金の水準は320万円だ。被害の実態に見合っているのか、改めて考える必要もある。

原告は最高裁に上告する方針だが、被害者の多くは高齢化している。ほかに類を見ない重大な人権侵害であった以上、国は全面解決に動くべきではないか。