バンブーズブログ

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[社説]電動キックボードを安全に


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/30 2:00
電動キックボードの規制緩和を前に開かれた交通ルールの周知イベント(27日、東京都豊島区)
都市部を中心に普及が進む電動キックボードの規制が7月1日から緩和される。16歳以上であれば免許不要で、低速時は歩道走行が可能になる。

短距離を移動する手軽な乗り物として使い勝手がよくなる一方、事故の増加が懸念されている。安全対策を徹底し、交通手段の多様化につなげたい。

7月から改正道路交通法が施行され、最高速度が時速20キロ以下で一定のサイズ以下の機種が「特定小型原動機付き自転車」と区分される。最高速度を6キロ以下に設定すれば歩道も走れる。ヘルメット着用は自転車と同じ努力義務だ。

電動キックボードを含むマイクロモビリティー環境負荷が小さく、渋滞緩和などの効果が期待される。都市部や観光地でのちょっとした移動のほか、高齢者の日常を支える手段にもなる。

自動車中心の交通社会を変え、新たなサービスイノベーションを生むことが期待できるだろう。

しかし安全性が守られなければ社会の理解を得るのは難しい。日本に先んじて普及した欧州では、事故増加などを理由に規制を強化する動きがある。

警察庁によると2022年は全国で計41件の人身事故が発生し、初の死亡事案も起きた。規制緩和でさらに増えるとの懸念は強い。電動キックボードは自転車より車輪が小さいため安定性が低い。歩道を行き交うようになれば歩行者との接触事故のリスクも増す。

免許不要ということは、交通法規を学ぶ機会がほとんどないまま運転する人もいる前提だ。違反をすれば交通反則切符(青切符)などの対象になるとはいえ、現時点でそのことをどれだけの利用者が認識しているだろうか。

利用前にテストを課すシェアリングサービス事業者もあるが、行政も含めルールや安全な乗り方を教育・啓発する場をさらに広げたい。取り締まりの徹底や走りやすい道路インフラの整備、より安全な車両の開発にも継続して取り組まねばならない。