#社説 #オピニオン #生成AI
2023/11/4 2:00
AIに関する大統領令についてホワイトハウスで演説するバイデン米大統領(10月30日、米ワシントン)=AP
文章や画像を作れる生成AI(人工知能)の開発や活用について、ルール整備の動きが世界で加速している。バイデン米大統領は10月30日、安全確保や開発加速を柱とする大統領令に署名した。
生成AIは生産性の向上などへの寄与が見込まれる一方、誤情報の拡散や差別の助長といったリスクへの懸念も強まっている。日本でも活用促進とリスク低減のバランスがとれたルール整備に向け、議論を急ぎたい。
米国では今夏、生成AI分野の主要企業と政府が議論し、企業による自主規制で合意した。大統領令はその枠組みを土台として、政府による安全性審査の義務付けなどを加え実効性を高めた。技術開発は民間が担い手であり、官民が力を合わせたルール整備は現実的で有効なやり方だ。
欧州は政府主導で議論を進め、あらゆるAIを包括的に規制する「AI法」案を6月に欧州議会が採択したが、競争力をそぐとして産業界から反対論が出ている。リスク低減と活用促進や柔軟性とのバランスをどう取るか、着地点の模索が続く。
日本は政府の「AI戦略会議」がAI政策のあり方を検討している。リスク管理については強制力のない「事業者ガイドライン」に委ねる方向だ。安全確保や権利保護のために強制力の強いルールが必要ないか、議論がやや足りない印象がある。規制と促進のより良い均衡点を探ってほしい。
ルール作りは世界各地で進む。米スタンフォード大学によると2022年には世界でAIという文言を含む37本の法案が通過した。ただ、バラバラにルールが乱立すれば有効性が確保できない。国際協調が大事だ。
英国で29カ国・地域の閣僚級を集めて今週開かれたAI安全サミットでは、政府による安全性審査の必要性について日本を含む複数国が合意したという。技術課題や解決策を議論する専門家会議の設置も決まった。日本も国際ルール作りに積極的に参画したい。