バンブーズブログ

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[社説]安倍氏銃撃事件の教訓を着実に生かせ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/7/7 19:05
安倍晋三元首相は選挙の応援演説中に銃撃された(奈良市の事件現場付近に設けられた献花台、2022年7月14日撮影)
安倍晋三元首相の銃撃事件から1年がたった。凶行は民主主義の根幹を揺るがし、日本の治安に対する信頼を大きく損ねた。

事件はさまざまな課題を浮き彫りにした。その解を探る道はなお半ばにある。安全で健全な社会を目指し、着実に歩を進めたい。

事件後、警察庁は要人警護のあり方を抜本的に見直し、再発防止を誓った。にもかかわらず今年4月、岸田文雄首相が襲われた。衆人環視の中、再び選挙期間中の凶行を許したことは看過できない。

インターネットなどでは被告の境遇に同情し、英雄視するかのような声もある。だが、いかなる理由があろうとも暴力で生命を脅かし、言論を封殺する行為は許されない。そのことを社会全体であらためて共有したい。

両事件とも特定組織に属さない単独犯だった。警察庁はこうした「ローンオフェンダー」への対策を強化するという。武器の製造方法などネット上の有害情報への監視も強めている。警護の死角をなくすとともに、犯罪の「芽」を摘む工夫が重要だ。

政治家自身も真剣に受け止めねばならない。「支持獲得にマイナス」「臆病に見られる」などの理由で厳重な警備や警護に消極的になっているとすれば的外れだ。自分だけでなく、聴衆の生命も危険にさらすことを自覚すべきだ。

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による献金強要の問題はまだ決着していない。文化庁は宗教法人法に基づく解散命令請求の可否を判断するため、教団側への質問を繰り返している。組織的、継続的な違法行為があったのか慎重に調べているとみられる。

信教の自由がからむだけに拙速は避けねばならないが、新たな被害を生まぬためのスピード感も重要だ。国民が納得できる調査と結論を求めたい。

1月には宗教団体などによる不当な寄付勧誘を禁止する被害者救済法が施行された。信者を親に持つ「宗教2世」らからは不十分との批判が出ている。法整備がゴールではない。継続的に運用状況を把握し、被害者を一人でも減らす方向につなげたい。

教団について岸田首相は自民党として関係を断絶すると言明したが、過去の経緯を含め検証がすんだとはいえない。政策決定への影響などはなかったのか。「すでに終わった話」と考えているとすれば、有権者の不信は拭えない