[社説]「忘れられた紛争」を放置するな
#社説 #オピニオン #中東・アフリカ
2024/1/18 19:00
スーダンの西ダルフールの紛争拡大を逃れ隣国チャドに避難する人々(23年8月)=ロイター
アフリカなどの地域紛争が深刻な状況に陥っている。欧米はウクライナや中東問題への対応で手いっぱいで、中国やロシアは国益に直結しない地域の問題の介入に後ろ向きだ。戦争犯罪や人道問題を広げる各地の危機をこれ以上、放置するのは危険だ。
経済や世論への影響が大きく大国同士の衝突に発展しかねないリスクに各国が外交・軍事の資源を集中させるのは理解できる。だが、「忘れられた紛争」が重大な危機を招きつつあることを見落としてはならない。国連のグテレス事務総長は「世界の紛争はますます複雑で致命的、解決困難なものになっている」と警告する。
北アフリカのスーダンでは国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との戦闘が続く。国際人権団体はダルフール地方での虐殺のリスクが高まっていると指摘する。関係国による調停の努力は失敗が続き、一部の紛争当事者の妨害で人道支援も遅れている。
アフリカ西部マリは治安の安定とほど遠い状況のなか、国連安全保障理事会が2023年、国連平和維持活動(PKO)の終了を決めた。アフリカ各地でPKOの活動縮小や撤退が検討されている。
21年のクーデターで国軍が全権を掌握したミャンマーでは、武装組織と国軍のあいだの衝突が激化し多数の市民が家を追われている。市民弾圧を続ける軍事政権への国際社会の圧力は不十分だ。
紛争解決では米国の指導力が低下し、国連が従来のような役割を果たしにくくなっている。
アフリカ連合(AU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)が紛争解決や治安回復で役割を果たすことは、国際社会の関心をつなぎとめておくうえでも重要だろう。日本は紛争の遠因である貧困の削減など課題克服でもっと協力できるはずだ。
アフガニスタンやイラクの歴史が示すように危機や対立を放置すれば、やがて過激思想の拡散や国際テロなど思わぬかたちで世界に跳ね返ってくる。