バンブーズブログ

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[社説]エジプトは民主化を進めよ


 
 
#中東・アフリカ #国際 #社説
2023/12/17 2:00
 
権威主義的な統治を続けるエジプトのシシ大統領=ロイター
エジプトで大統領選の投票がおこなわれた。軍出身のシシ大統領の3選が確実視されている。アラブ最大の人口と国際物流の要衝スエズ運河をかかえる同国の安定は中東地域と世界にとって重要だ。経済改革とともに、長年の課題である政治の民主化を進める必要がある。

2013年の事実上のクーデターを主導したシシ氏は、デモや報道の自由を制限したままだ。憲法改正で任期を延長するなど権威主義が色濃い。中東で起きた民主化運動「アラブの春」の後、大混乱に陥った社会を安定させるため強権的な統治を国際社会もいったんは受け入れた。だが、その副作用が強まっていることに注意しなくてはならない。

軍や国による経済への介入で民間部門は圧迫されている。足元のインフレ率は35%程度と高い。国内総生産GDP)のおよそ40%に達する対外債務の多くが湾岸アラブ産油国からの借り入れだ。中央銀行による通貨の買い支えで外貨準備は大きく目減りした。

政治の閉塞感と経済の苦境という組み合わせは、まさに「アラブの春」直前のエジプトが直面していた課題だ。

パレスチナイスラム組織ハマスイスラエルの衝突をめぐり、エジプトは国境から支援物資を搬入し、重傷者を受け入れた。将来の和平の話し合いでもエジプトの役割は欠かせない。

ハマスの源流はエジプトのイスラムスンニ派の宗教組織「ムスリム同胞団」にある。同胞団はエジプト政府による非合法化と弾圧のなかで過激化した。反体制派の締め付けは、かえって過激思想を通りやすくするおそれがある。言論や思想をおさえ込むのではなく段階的に民主化を進めなくては、弾圧と動乱の悪循環にもどりかねない。

岸田文雄首相は12月はじめにシシ大統領と会談し、財政支援の検討を伝えた。経済改革と民主化の両方を同時に進める必要性を訴え続けるべきだ。