バンブーズブログ

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[社説]CO2貯留の基盤整備を急げ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/17 2:00
 
工場や発電所から出るCO2を回収し、地中に貯留するCCSの重要性が増している
温暖化ガス排出の実質ゼロ実現の手段として、工場や発電所から出る二酸化炭素(CO2)を回収し、地中に貯留する技術(CCS)の重要性が増している。各国が導入へ動いており、日本も活用へ基盤整備を急がねばならない。

国際エネルギー機関(IEA)によれば、2050年には世界で足元の温暖化ガス排出量の1〜2割に相当する年間36億〜72億トンをCCSで処理する必要がある。

政府は今年3月にCCS活用の道筋を定めたロードマップを策定した。2050年に1.2億〜2.4億トンの貯留を目標とし、重点支援する先行7事業を選定した。

ただし実用化には様々な課題がある。まず日本周辺の海底を含め、地中に貯留するための適地の確保が条件となる。

そのうえで工場などから出るCO2を回収して船舶やパイプラインで運び、地中へ貯留する技術をつなぐバリューチェーンを構築することが求められる。

政府の役割は大切だ。企業がCCSを実行に移すためにはCO2を地中に長期貯留する権利や、管理・監視の責任を定めた法制度を整えることが前提となる。

導入時の事業者負担を軽減する資金支援策も必要だろう。米国は火力発電所へのCO2回収設備の設置義務化を検討する一方、22年に成立したインフレ抑制法により、CCSを活用する事業者にCO21トンあたり85ドルを支援する。

国内で回収したCO2を、海外に運んで地中貯留する場合の国際ルールの整備も重要だ。

CCSは製鉄や化学などCO2の排出量が多く、再生可能エネルギーへの転換が難しい産業に不可欠だ。経済産業省によれば、火力発電所がCCSを使ってCO2を処理するコストは、燃焼させてもCO2を出さない水素やアンモニア燃料の利用と比べて遜色なく、場合によっては安くなる。

カーボンゼロ実現へ、再生エネの最大限の導入や水素など脱炭素燃料の活用とともに、CCSを活用する総力戦で臨みたい。