バンブーズブログ

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[社説]大手損保の談合体質は許されない


 
 
#社説 #オピニオン #損保の価格調整問題
2023/8/22 2:00
 
大手4社のシェアが9割という寡占状態がカルテル疑惑の背景にある
企業向けの損害保険をめぐり、損害保険会社によるカルテルの疑いが浮上している。業界再編で誕生した大手損保が高シェアを背景に不正に手を染めていたなら、断じて許されない。カルテル疑惑の温床になった商慣習や談合体質を改める必要がある。

保険料の水準を損保各社が水面下で相談していた疑いは、私鉄グループの東急向けで6月に発覚した。仙台国際空港宮城県名取市)や石油元売り大手向けでも同様の行為が疑われ、価格調整が横行していた可能性がある。

公正取引委員会は8月に入って独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで大手4社の任意調査を始めた。東京海上日動火災保険三井住友海上火災保険損害保険ジャパンあいおいニッセイ同和損害保険が対象だ。4社に報告徴求命令を出した金融庁と連携し、厳しく対処すべきだ。

問題は「共同保険」で起きた。保険契約を損保各社が分担し、巨額の保険金支払いに備える仕組みだ。インフラ事業者や製造業向けに活用される。共同保険を名目に保険料をつり上げる談合を繰り返していたのなら、あまりに顧客をないがしろにしている。

1社で対応できない支払いに備える共同保険は必要だ。共同保険を円滑に進めるやりとりと、カルテルにつながる情報を線引きして管理しなければならない。

損保業界は2000年代からの再編で、大手4社の企業向け保険のシェアが9割という寡占状態にある。再編で大手の経営体力が増す利点があったものの、顧客から見た選択肢の減少が業界に緩みをもたらしていなかったかどうか。徹底的に検証すべきだ。

自然災害の頻発で損保の経営環境は厳しい。収益改善のプレッシャーがかかりやすいとしても、不正の言い訳にはならない。

中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求をめぐっても、損保ジャパンなど大手損保に厳しい目が向けられている。損保ジャパンなどは22年にビッグモーターの不正請求の疑いを知りながら真相の解明を怠った。サボタージュの被害者は不正請求で保険料が跳ね上がった利用者だ。

個人と法人の違いはあるが、通底するのは顧客の利益を軽んじる体質だ。損保業界は相次ぐ不祥事をきっかけに、法律を順守し、顧客の利益に努めるという経営の基本に立ち返るべきだ。