バンブーズブログ

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[社説]占領を既成事実にするな


 
 
#ウクライナ侵攻 #社説
2023/9/7 2:00
 
ロシアが占領するドネツク州での地方選。屋外に置かれた移動式の投票箱で期日前投票が行われている(4日)=ロイター
ロシアで8〜10日、統一地方選の投票があり、占領するウクライナ東・南部4州(ルガンスク、ドネツク、ヘルソン、ザポロジエ)でも、初めてロシアの選挙が強行される。ウクライナに侵攻したロシアが、今度は4州の併合を既成事実にしようとしている。断じて認められない。

ロシアは2014年のウクライナ東部紛争に続き、22年2月からの軍事侵攻で4州の一部を占領した。同年9月の「住民投票」でロシア編入への賛成が多数だったとして一方的に併合を宣言した。

国連憲章は侵略のための武力行使を禁止しており、侵略した地域での住民投票や選挙にも合法性はない。国際社会はロシアへの批判をさらに強めるべきだ。

4州では州と市の議会選の後、州議会で知事を選ぶという。戦時下で戒厳令が敷かれているが、今年5月に戒厳令下での選挙の実施を認める法案を成立させた。強引な地方選で統治機構を形式だけ整えても、住民の不満は抑えられないとロシアは理解すべきだ。

ウクライナは地方選を「イミテーション(まがい物)だ」と批判している。実態をよく表しているといえよう。プーチン政権が候補者や政党、選挙管理委員会を統制し、反政権派は立候補できない。

ウクライナの軍事機関によると、期日前投票では選管職員が兵士とともに各居住区に投票箱を持ち込み、投票を促している。銃剣の下、自由な意思を表明する権利は保障されていない。与党圧勝と高い投票率を演出するための選挙で、公正さからはほど遠い。

ウクライナ4州でのロシア地方選は、ロシアが実効支配を続けている北方領土を抱える日本にとっても、ひとごとではない。

ロシアは今年、「第2次世界大戦終結の日」としてきた9月3日の名称を「軍国主義日本への勝利と第2次世界大戦終結の日」に変更し、北方領土などで式典を催した。ウクライナ情勢に北方領土問題を重ね合わせ、双方の「不法占拠」を早期に解決したい。