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2023/9/7 2:00
中間貯蔵施設の調査受け入れを表明した山口県上関町の西哲夫町長。原発予定地として中国電力が所有する地区の一角に中間貯蔵施設の候補地もある(8月)
中国電力が関西電力と共同で山口県上関町に計画する使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、同町の西哲夫町長が建設に向けた調査を受け入れると表明した。
原子力発電所での使用済み燃料の保管能力が限界に近づき、中間貯蔵施設の活用は避けて通れない。国と電力会社は立地地域に説明を尽くし、透明性のある形で計画を進めることが重要だ。
中間貯蔵施設は原発から出る使用済み燃料を、青森県六ケ所村に建設中の再処理工場に搬出するまで一時的に保管する施設だ。
国は使用済み燃料から取り出したウランやプルトニウムを加工し、再び燃料として使う「核燃料サイクル」を基本政策に位置付けている。しかし、中核となる再処理工場は着工以来、完工時期の先送りを繰り返している。その間、各地の原発には再処理工場に運び入れることができない使用済み燃料がたまり続けている。
なかでも関電は今月にも7基目の原発が再稼働し、今後5〜7年で使用済み燃料の原発での保管能力が上限に達する。関電は原発が立地する福井県との間で、使用済み燃料を県外に搬出すると取り決め、そのための中間貯蔵施設を23年末までにめどをつけると約束していた。
中国電は来年にも島根原発の再稼働を控えており、関電と共同で計画を進める。実現すれば東京電力ホールディングスと日本原子力発電が青森県むつ市に建設中の施設についで2例目となる。
岸田文雄政権は原発政策を転換し、再稼働の加速や既存原発の運転期間延長、原発の建て替えに踏み出した。50年の温暖化ガス排出の実質ゼロに向けて脱炭素電源である原発の役割は大きい。
ただし、原発を活用する以上、核燃料サイクルの停滞や使用済み燃料の放置は許されない。政府が使用済み燃料の最終処分など、バックエンドと呼ぶ作業の迅速化を約束したのは当然だ。
作業の停滞が続けば、上関町の住民らが、一時的であるはずの中間貯蔵が、なし崩しで長期保管になってしまうのではないかと不安を抱くことになりかねない。
東電福島第1原発の廃炉や、福島県外へ搬出するとした汚染土やがれきなどの処理を着実に進めることも大切だ。電力会社まかせにせず、国が責任を持って原発活用の道筋を示し、国民の不信感を取り除くことが条件となる。