バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]ニデック「同意なき買収」が開く成長の道


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/16 2:00
 
ニデックの永守重信会長兼CEOは「同意なき買収はM&Aの新たなモデルケース」と強調する
日本企業はこれまで手持ちの経営資源で成長する自前主義にあまりにも重きを置いてきた。今後はM&A(合併・買収)を通じた成長戦略にも幅を広げるときだ。

最近の動きで特筆されるのは、ニデック(旧日本電産)による工作機械メーカーのTAKISAWAの買収だ。ニデックは7月に先方の取締役会の同意を得ないままTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。かつては「敵対的買収」、今は「同意なき買収」と呼ばれ、一部では強引すぎると忌避された手法である。

ニデックはその後に相手とのやり取りを重ね、最終的にはTAKISAWAの取締役会の合意を取り付けたうえで、14日からTOBを開始した。過去にも数多くの買収を実現してきた永守重信会長は「企業買収の新たなモデルケースになる」と表明した。

工作機械を戦略ビジネスと位置づけるニデックにとっては、旋盤に強いTAKISAWAを傘下に収めることで技術の欠落を補い、事業展開の幅が広がる。

TAKISAWAはニデックの世界的な営業網を活用することで、新規の顧客開拓が期待できる。両社の有価証券報告書によると、ニデック従業員の平均年収はTAKISAWAのそれより170万円高い。買収後にニデックの水準に賃金が収れんすれば、働く人にもメリットが大きい。

一度はニデックからの水面下の買収提案を断ったとされるTAKISAWAが翻意した背景には、独立社外取締役の働きも大きかったようだ。経営陣の保身ではなく、株主はじめ各ステークホルダーの利害を熟慮して経営判断を下す公平な視点に期待したい。

米国ではGAFAMと呼ばれるテック企業を筆頭に活発な買収が成長戦略の基軸だ。日本でも日立製作所の近年の飛躍は米社などの買収の成功が原動力になった。

買収を通じて外部の人材や技術を取り込むことで、高い成長の道が開ける。事業売買が日常のものになれば企業社会にも緊張感が生まれる。マクロ経済の面でも資源配分の最適化や業界再編、産業の新陳代謝の加速が期待できる。

他方で買収には企業文化の衝突や高値づかみといったリスクもつきものだ。東芝の米ウエスチングハウス買収のような失敗例からも教訓を学びながら、巧みなM&Aで会社を飛躍に導く。経営者の腕の見せどころである。