バンブーズブログ

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[社説]企業の成長支える買収制度を整えよう


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/11 2:00
企業買収への株式市場の注目は高い(東京証券取引所
企業買収に関する様々な制度の整備が進んでいる。産業の再編を進め、企業が成長を続けるうえでM&A(合併・買収)は不可欠の手段だ。日本経済にさらに深く広く根づかせるためにしっかりした基盤を築きたい。

経済産業省は「企業買収における行動指針」の案をまとめ、8日から公に意見を募り始めた。買収提案を受けた場合、すみやかに取締役会に付議し、企業価値向上の観点からできるだけ客観的に検討するよう求めた。

会社側の賛同を得ずに提案された買収も、株主には恩恵をもたらすことがある。このため、そうした「同意なき買収」が経営陣の保身などを理由に拒まれるべきではないと念を押している。

企業買収に密接にかかわるTOB(株式公開買い付け)や大量保有報告制度については、金融庁の審議会が5日から、見直しの議論を開始した。

現在の制度では株式数の3分の1超を取得する場合、市場外の相対取引にはTOBを義務づけている。しかし、取引所の通常取引ではTOBの義務がない。企業やファンドが市場内でひそかに株式を買い集めた後に突然、買収に乗り出す例もある。

このため株式数の3分の1超を取得するなどの場合は、市場内でもTOBを義務づける案が浮上している。透明度を高めることにより、TOBの利用を促す施策といえる。支持できる考え方だ。

5%超の株式保有を届け出る大量保有報告制度は「実効性が課題」とする声が聞かれた。現在は報告書の提出の遅れが少なくない。取り締まりの強化や罰則の厳格化により、制度の信頼性を高める必要がある。

株式を買われる側も新たな大株主を早く知れば、必要に応じて資本提携などを視野に対話を始めることができる。

東京証券取引所が、株価が帳簿上の解散価値を下回る「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」の対策を求めたことも、M&A促進の素地となる。企業買収は手元資金活用の一手だからだ。

情報会社リフィニティブによれば、2022年度の日本企業のM&Aは16兆円強と、世界の約4%だ。日本経済の規模や成熟度を考えれば、拡大の余地があるだろう。成長志向のM&Aが増えれば、株高が映す日本企業への再評価も持続するはずだ。