バンブーズブログ

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[社説]ナゴルノが映すロシアの限界


 
 
#ウクライナ侵攻 #社説
2023/9/24 2:00
 
ナゴルノカラバフでは紛争が長期間続いている(9月19日)=AP
旧ソ連アゼルバイジャンが隣国アルメニアとの係争地ナゴルノカラバフで始めた軍事作戦はアゼルが事実上勝利し、停戦合意した。武力による敵対行為は許されない。停戦を一時的ではなく、恒久的な和平実現に向け、関係国、国際社会は総力をあげるときだ。

上川陽子外相はアゼルの軍事活動の停止と平和的解決を求める談話を発表した。ロシア軍のウクライナ侵攻で世界が不安定化するなか、日本政府は新たな火種が広がらないよう取り組んでほしい。

ソ連末期から紛争が続くナゴルノカラバフでは2020年と22年にも大規模な軍事衝突が発生し、双方で合計数千人規模の死者が出た。今回はアルメニアが反撃しなかったためほぼ1日で戦闘は終息したが、先行きは不透明だ。

現地の強硬派が武装解除に応じるかやアルメニア系住民らの処遇などが課題となる。現地はアルメニアとの往来が制限され、物不足などが深刻化している。アゼル側は停戦維持だけでなく、人道支援を受け入れる態勢整備が急務だ。

今回の衝突では旧ソ連の盟主を自任するロシアの影響力の低下が浮き彫りとなった。

アルメニアはロシアが主導する軍事同盟、集団安全保障条約機構(CSTO)の加盟国だ。ナゴルノカラバフにはロシアの平和維持部隊も駐留する。しかし、20、22年の戦闘ではアルメニアが軍事支援を求めたが、ロシアは応じなかった。平和維持部隊も十分に機能しているとはいえない。

ウクライナ侵攻で疲弊するロシアにはこの地域の平和を維持する意志と能力はもはやない。アルメニアよりアゼルバイジャンの後ろ盾であるトルコに配慮したとの指摘もある。侵攻後、同国への経済依存を強めているからだ。

アルメニアのパシニャン首相はCSTOからの脱退を示唆し、米国に接近している。中央アジア諸国でもロシア離れが進む。旧ソ連でのロシアの求心力低下が及ぼす地政学的な変化にも目をこらす必要がある