#社説 #オピニオン #イスラエル・ハマス衝突
2023/12/8 2:00
家を追われ避難場所に身を寄せるパレスチナ人の女性と子供(6日、ガザ南部ラファ)=ロイター
10月7日にパレスチナ自治区ガザを支配するイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃した事件から2カ月が経過した。イスラエルによるガザへの報復攻撃は、つかの間の戦闘休止をはさみ今もつづく。ガザで深まる人道危機をこれ以上は放置できない。
ハマスは他の武装勢力と協力し、イスラエルへの越境攻撃を仕掛けた。無辜(むこ)の民間人を連れ去り惨殺した暴力は許されざるテロ行為だ。解放された一部の証言から人質への非道なあつかいも明らかになった。どんな事情があっても、ハマスの行動を擁護することはできないと私たちは繰り返し指摘してきた。
だが「ハマスの壊滅と人質奪還」を目標にしたイスラエルの報復は、まったく釣り合わない数の死傷者を出している。ハマスの襲撃で殺された1200人に対し、ガザの死者は1万6千人を超えた。犠牲の多くは民間人だ。後ろ盾である米国ですらイスラエルに自制をもとめるようになった。
空爆や戦闘だけではない。食べ物も水も電気も燃料も住む場所もなく、病院や避難所は負傷者や病人であふれている。その苦痛は想像を絶するものがある。
国連によればガザ住民の8割にあたる190万人が家を追われた。被害を直視せず攻撃を続けるのであれば、イスラエルの行動は正当性のない「集団的懲罰」であると批判されてもしかたがない。
イスラエル軍は12月からのガザ南部への作戦拡大を前に、全域を600以上の細かなゾーンに分けた地図を示し、行動を予告して住民の避難を助ける戦略をとった。しかし通信状況が不安定な混乱のさなかに、住民たちが正確な情報をタイムリーに手にして行動できるとは思えない。
たとえ困難でも民間人を戦闘員から区別し、きちんと安全を確保するのは近代国家であるイスラエルの軍が果たすべき義務だ。
国際社会は停戦に向けた努力をさらに強める必要がある。解放されていない人質は100人以上残っている。カタールなどの仲介努力に期待が寄せられる。
戦闘が続くさなかでも危機をやわらげる方法はある。国連はイスラエルが管理するケレムシャローム検問所をひらいて支援物資を直接ガザにとどけるよう求めてきた。エジプトとの国境にあるラファ検問所を通じた細々とした支援は大幅な拡充が必要だ。