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2023/10/17 2:00
メタが運営するフェイスブックなどのSNSでは偽情報の書き込みだけでなく、広告による詐欺も問題になっている(米カリフォルニア州のメタ本社)
フェイスブックやインスタグラムなどのSNS(交流サイト)で、企業や個人になりすまして最終的におカネをだまし取ろうとする詐欺広告が後を絶たない。SNS運営企業は広告媒体としての責任を自覚し、審査強化などの対策に真剣に力を入れるべきだ。
SNS上における詐欺広告が目立つようになったのは2022年春ごろからだ。20年春に閉店した東急百貨店東横店の閉店処分品セールを装って偽の買い物サイトに誘導する広告が多くのフェイスブック利用者の画面に表示され、話題になった。
その後も、みずほ証券、野村証券、SBIグループ傘下企業など、主に金融・証券関連の大手企業を装う偽広告が後を絶たない。本物の企業ロゴのコピーを無断で使っており、一見しただけだと本物と間違えかねない。
企業だけでなく、SBIグループの北尾吉孝代表、レオス・キャピタルワークスの藤野英人会長兼社長、起業家の前沢友作氏ら、投資家として著名な個人を装う広告も目に付く。別サイトなどに誘導し、情報商材の代金などとして送金を求めるケースが多い。
詐欺広告を出している主体は実体不明の海外組織であることが多いとされる。広告主の実在や広告内容の確認など広告媒体側の審査が不十分だ。フェイスブックを運営する米メタは自動審査システムの改良を重ねているというが、さらに見直しを加速すべきだ。
利用アカウントそのもので個人や組織を装う偽アカウント問題については、運営企業やファクトチェック機関などが対策を強化してきた。しかし、偽装広告については政府も企業もほぼ放置し、対応が遅れていた。
詐欺は犯罪であり、なりすましは個人や企業の信用を毀損する。問題に詳しい板倉陽一郎弁護士は、SNS企業は広告の表示で収入を得ており不作為の共犯とみなされうると指摘する。詐欺広告を放置し続けるSNS企業には司直による対応も必要だろう。