バンブーズブログ

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[社説]米長期金利上昇の影響注視を


 
 
#社説 #オピニオン #金融政策
2023/11/3 2:00
 
パウエルFRB議長は米長期金利の上昇が利上げの必要度合いに影響しうると説明した(11月1日の記者会見、米ワシントン)=ロイター
米国の長期金利が一時16年ぶりに5%台に上昇し、世界の市場を揺さぶっている。円安進行に直面する日本を含め、米国内外の経済・金融に及ぶ影響は甚大だ。米連邦準備理事会(FRB)は動向や波及経路をつぶさに分析し、柔軟な金融政策運営に努めてほしい。

FRBは1日の米連邦公開市場委員会FOMC)で政策金利の引き上げを見送った。9月時点では年内あと1回の利上げを見込んでいたが、パウエルFRB議長は長期金利の上昇を主な要因に今後、追加利上げの必要性が低下する可能性を示唆した。

企業や家計などの金利負担が重くなったり、資金調達の条件が厳しくなったりして景気を下押しするかもしれないからだ。

米国経済は好調が続く。多少の景気減速ならむしろ好都合だが、心配もある。低金利時代の借金が借換時期を迎えるにつれ、企業や家計の金利負担が一気に高まるリスクは否定できない。

今春に米地銀の破綻が相次いだ際は、金利上昇で銀行が保有する米国債の価値が大幅に下落し、不安に火をつけた。不動産市況へのショックも懸念される。

FRBは利上げを終えても当分は高い政策金利を維持する構えだ。米国債保有の削減も着々と進めるという。インフレの鎮圧を優先する姿勢は理解できる。

同時に、不測の混乱に備えて柔軟な金融政策運営や金融の安定を心がけるとともに、市場との対話にも力を入れてほしい。

日銀が10月末に長期金利を低く抑える緩和策を再修正したのは、米金利の上昇が日本の金利にも波及したことが大きかった。円相場が一時1ドル=151円台後半まで下落し、33年ぶりの安値に迫ったのも米金利が底流にあった。

急激な円安進行は輸入コストの増大を通じて国内物価に跳ね返る。国内金利の急上昇は市場や経済の混乱を招きかねない。米長期金利は日本経済を大きく左右するだけに、日銀は動向を常に注視し、情勢分析にあたるべきだ。