そう問われて何が思い浮かぶだろう。
2021年に太陽生命保険が2472人を対象に行ったアンケートでは、がんと答えた人の28.7%を抑えて、認知症が42.2%と、大差で1位となった。それほどまで、認知症は怖い病気と考えられているのだ。しかし、医療の発達で、認知症に対する見え方も変わってきている。
23年9月25日、アルツハイマー型認知症の新薬「レカネマブ」が日本でも薬事承認された。従来からある認知症薬と違い、同薬は認知症が進行するメカニズムに直接作用する薬として注目されている。
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβやタウと呼ばれるタンパク質が引き金となって発生する。原因となるそれらのタンパク質が、脳内に長い時間をかけて蓄積される課程で神経細胞が破壊され、やがて脳が萎縮し、記憶障害などの症状が現れる。
レカネマブの治験結果の検証作業に携わった東京大学大学院医学系研究科教授・岩坪威医師が解説する。
「1年6カ月に及ぶ治験の結果では、レカネマブを投与された人は認知症の原因となるアミロイドβの蓄積が約60%減少しました。また、投与していない人と比べて、認知症の進行が約27%抑えられました。期間に換算すると約7カ月の間、症状の進行を遅らせたということになります」