バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]エーザイ新薬を認知症克服の足がかりに

[社説]エーザイ新薬を認知症克服の足がかりに
 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/23 19:05
 
厚労省の部会は21日、レカネマブの承認を了承した
アルツハイマー病の進行を緩やかにする画期的な薬が日本でも使えるようになる。エーザイが米バイオジェンと共同開発した「レカネマブ」だ。厚生労働省が近く製造・販売を承認し、保険適用を経て年内にも治療が始まる。

認知症への対応は、深刻な介護問題に直結し、将来の社会の姿にも大きな影響を与える。国内発のアルツハイマー病薬を認知症克服の足がかりにしたい。

レカネマブは原因物質とされるアミロイドベータを標的にした治療薬。これまでメガファーマ(巨大製薬会社)などが開発に挑んだが相次ぎ失敗した。

認知症研究に40年来取り組んできたエーザイは国内外の研究データを駆使し、新薬の実現にこぎ着けた。巨額投資がいる新薬開発でリスクを取った経営判断が奏功したといえる。

最新のバイオ技術を応用し、次々に登場するがん治療薬と同じように、アルツハイマー病が製薬ビジネスとして成り立つことを示した点も大きい。今後、国内外で認知症の研究や創薬競争が加速するだろう。

臨床への応用に向けて課題はいくつかある。レカネマブはすべてのアルツハイマー病に効くわけではない。対象となるのは症状が出始めた初期段階か、認知症に移行する前の軽度認知障害(MCI)の患者だ。

しかも薬の効果は認知機能を改善するのではなく、症状の悪化を緩やかにするにとどまる。1年半かけて治療すると平均27%進行を遅らせることが臨床試験(治験)でわかった。患者やその家族がどこまでこの効果を実感できるかはまだみえない。

日本の場合、当面は治療に対応できる医療機関も限られる。一定の割合で起きる脳の腫れや出血などの副作用に対応しなければならないからだ。患者の選定にも精度の高い検査がいる。専門医の拡充とともに全国レベルでの医療体制の整備が急務となる。

注目されるのが薬価だ。製薬会社が薬の値段を決める米国と違い、国民皆保険のある日本では国が設定する。

米国ではレカネマブの年間薬剤費は2万6500ドル(約390万円)。これをかなり下回る見通しだが、価格を抑えすぎると製薬会社のイノベーション意欲をそぐ。高いと医療財政の問題になる。厚労省の手腕が試される。