には
#社説 #オピニオン
2023/11/8 2:00
イスラエルの攻撃から逃れるパレスチナ人(6日、ガザ中部)=ロイター
イスラエルと、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスの衝突が始まって1カ月が経過した。犠牲者は増え続け、終息が見えない。報復の応酬は新たな憎しみを生む。衝突の長期化に伴う憎悪の悪循環を断ち切らねばならない。
ガザ地区に地上侵攻したイスラエル軍は最大都市ガザ市を包囲した。ガザではこれまでの攻撃で住宅のほぼ半数が損壊したという。逃げ場のないガザで多くの人が避難民となり、人道危機も深刻さを増している。
難民キャンプや病院、救急車の車列も攻撃を受けた。イスラエル軍はハマスが病院の地下にトンネルを掘り、救急車を移動手段に使っていると主張する。
実態はわからない。仮に事実だとしても、そこには多数の民間人の暮らしがある。こうした人々を盾にするハマスと、容赦ない攻撃を加えるイスラエル双方の非情さに憤りを覚える。
ハマスとイスラエルの行動が、国際人道法にかなったものであるのかを厳しく問う必要がある。
パレスチナ側の犠牲者は1万人を超えた。イスラエルも少なくとも1400人が死亡した。ネタニヤフ首相はハマスが人質を解放しない限り「停戦はない」と言明した。狭い路地が続くガザ市での掃討作戦が本格化すれば、犠牲者の数はさらに増えるだろう。
衝突前に中東を包んでいたアラブ諸国とイスラエルの和解ムードは吹き飛んだ。即時停戦を求めるアラブ諸国と、イスラエルやその後ろ盾である米国との温度差は大きい。ヨルダンやバーレーンのようにイスラエルと国交を持つアラブの国にも、イスラエル駐在の大使の召還を決めた国もある。
ネタニヤフ政権に加わる極右政党出身の閣僚が、ガザへの核兵器使用も「可能性の一つだ」と語った。大量殺りくを正当化し、中東に核兵器の拡散を招きかねない言語道断の発言である。
ネタニヤフ首相があわてて否定したのは当然だ。パレスチナとの和解に背を向ける極右勢力を取り込まざるを得ないネタニヤフ政権の弱点が、今回の衝突の根っこにあることを見逃せない。
衝突の犠牲になるのは、多くの無関係の市民だ。暴力の応酬を断ち切るには国際社会が間に入るしかない。東京で8日まで2日間、日本が議長となり主要7カ国(G7)外相会合が開かれる。国際社会の結束が試される。