バンブーズブログ

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[社説]米国とベトナムの連携を地域安定に生かせ


 
 
# ASEAN #東南アジア #社説
2023/9/12 19:00
 
バイデン米大統領㊧はインドでのG20首脳会議後、ベトナムに立ち寄り、グエン・フー・チョン書記長との会談に臨んだ(10日、ハノイ)=AP
ベトナムが米国との外交関係を一気に2段階引き上げ、中国やロシアと同格に位置づけた。歴史的に中ロと関係が深いベトナムが、複雑な地政学の下で大国とのバランスをとろうとする動きだ。

かつてベトナム戦争を戦った米越の急接近は、中ロの覇権主義的な動きを抑止するうえで日本にとっても望ましい。緊張を高めるのではなく、地域の安定に生かしてほしい。

インドで20カ国・地域(G20)首脳会議に出席したバイデン米大統領が、帰途にベトナムを訪れて最高指導者のチョン共産党書記長と会談し、関係強化を決めた。

米越は1995年に国交を正常化し、2013年に「包括的パートナーシップ」を結んだ。通常なら次の段階は「戦略的」だが、今回はいきなり最上位の「包括的戦略的」に格上げし、「広範な戦略的」である日越関係を上回った。

合意した経済や安全保障などの連携強化は双方に利点がある。

ベトナムにとって米国は輸出の3割を占める最大の相手国だ。米主導の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」にも参画済みで、米企業の投資誘致が見込める。

安保面でも中国と領有権を争う南シナ海問題での後ろ盾や、従来はロシアに依存してきた兵器の調達先の多様化が期待できる。

一方、米国にとりベトナムは、同盟国のフィリピンと共に中国の海洋進出に対峙する最前線だ。半導体や重要鉱物の対中依存を見直し、友好国で供給網を再編する「フレンドショアリング」を進めるうえで有力な受け皿になる。

ただ共産党独裁のベトナムは、民主国家の米国とは水と油の面がある。米国は政治犯不当逮捕などの人権侵害から目をそらさず、改善を要求していくべきだ。

バイデン氏が先週、インドネシアでの東南アジア諸国連合ASEAN)関連の首脳会議を欠席したのは残念だ。ミャンマー問題で結束が揺らぐものの、地域安定へASEANの役割は大きい。信頼を取り戻す努力が求められる。