バンブーズブログ

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[社説]直らない補正予算の水膨れ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/16 19:00
 
9兆円近い国債を増発する補正予算案を決めた10日午前の閣議首相官邸
「歳出構造を平時に戻す」という政府の方針はどこへ行ったのか。総合経済対策の裏付けとなる2023年度の補正予算案が決まった。8兆8000億円もの新規国債を増発し、執行が不透明になりがちな基金の新設も相次ぐ。水膨れ体質は一向に直っていない。

対策の経費は一般会計で13兆円あまり。30兆円近い歳出を追加した昨年度の2次補正よりは減ったものの、新型コロナウイルス禍の前に比べれば、なお非常に高い水準だ。23年度の国債発行は44兆円台と4年連続で40兆円を超え、危機対応時の借金依存が続く。

住民税が非課税の世帯に配る7万円の給付金、補助金によるガソリンや電気・ガスの価格や料金の抑制策といった物価高対策は、真の弱者に的が絞れていない。全体の規模が膨れあがる傾向にあり、脱炭素などの面でも問題が多い。

目立つのが複数の年度で使えるように財政支出をためる「基金」の膨張だ。補正予算案での全体の追加額は4兆円を超す。既存の27基金を積み増し、宇宙分野の技術開発向けなど4つの基金を新設する。当初予算の枠外である補正での積み上げが横行している。

経済安全保障の要素もある半導体の生産増強など、国の優先課題を名目にしたものも多い。だが、国会の監視が届かず所管官庁の裁量で支出可能な仕組みは、規律や透明性を低下させる。河野太郎行政改革相が最近、全基金への点検の強化を表明したのは当然とはいえ、遅きに失していないか。

過剰計上だった予備費の減額や使途の変更も相次ぐ。「まず規模ありき」で予算を確保した近年の過ちを露呈した。こうした修正でも歳出と借金の膨張はとまらない。防衛費や子育て対策の追加支出も必至で、財政や社会保障の持続可能性に不安が募る。

安全保障上の脅威や自然災害など予期せぬ事態に備え、財政規律の確保は重要だ。与野党補正予算案の審議で短期的な負担軽減策ばかり競わず、中長期の安定策を巡る議論を戦わせるべきだ。