バンブーズブログ

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社説]バラマキ型の経済対策はもうやめよ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/17 19:05
 
旧来型の需要追加とは一線を画す必要がある(内閣改造を終え、記者会見する岸田首相=13日、首相官邸
岸田文雄首相は13日の内閣改造後の記者会見で、10月中に「思い切った内容の経済対策」をまとめると表明した。物価高への対策や賃上げ促進、民間の投資拡大の後押しなどに言及し、月内に閣僚に柱立てを指示すると述べた。

世界規模のインフレや人手不足、少子化といった課題を克服し、日本経済を構造的に強くする不断の取り組みは欠かせない。だが、旧来の発想で規模を積み上げるバラマキ型の経済対策は厳に慎むべきだ。むしろ物価高を助長し、逆効果にすらなりかねない。

新型コロナウイルス禍の2020年度に政府は補正予算で73兆円、21年度も36兆円と巨額の対策を組んだ。感染が一服した22年度も与党に「まず規模ありき」の圧力が働き、第2次補正で29兆円を追加した。首相の「思い切った」が同様の発想なら、間違いだ。

内閣府は4〜6月期の「需給ギャップ」がプラスに転じ、4年近い需要不足が解消したと試算する。多額の財政出動で景気を刺激する局面ではない。対策を組むなら、日本経済の体質を転換する筋肉質の内容にすべきだ。

まず、十分に的を絞り、効果の高いものにする必要がある。

焦点が物価高対策だ。石油元売りや電力・都市ガス会社への補助金でガソリンや電気料金を下げる措置の期限が年末で切れ、24年以降の継続が浮上している。

これは市場の価格決定をゆがめ、脱炭素に逆行する。5月の主要7カ国(G7)財務相中央銀行総裁会議はエネルギー高騰への支援を最も弱い人々に絞り「適切に段階的に廃止すべきだ」とした。議長国の日本が出口戦略もなく延長を繰り返すのはおかしい。

賃上げ持続や投資拡大は重要だが、非効率なテコ入れは不要だ。労働市場改革や規制緩和で民間の努力や意欲を引き出す姿勢が欠かせない。専門の会議を創設するデジタル行財政改革も歳出改革の一環としてぜひ断行してほしい。

政府は経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で、歳出の構造を「平時に戻す」と明記した。防衛費や少子化対策の歳出増が控えるなか、財政規律への目配りが要る。近年目立った予備費の巨額計上などは論外だ。

「変化を力にする内閣」と首相は語った。支持率の浮揚を狙った短期の痛み止めに走るなら、看板倒れだ。中長期的に日本を強くする賢明な経済運営が望まれる。