バンブーズブログ

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[社説]中国は効果的な財政出動で景気浮揚を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/29 19:05
 
中国は1兆元の国債増発を決めた=ロイター
中国の習近平政権がようやく重い腰を上げた。景気の下支えへ追加の財政出動に踏み切る。世界経済の成長に中国経済の安定は不可欠だ。効果的な投資で景気を回復軌道に戻してもらいたい。

中国の国会にあたる全国人民代表大会全人代)の常務委員会が、国債を1兆元(約20兆5000億円)増発する政府の方針を認めた。調達した資金はすべて地方政府に回し、豪雨災害を受けた地域などの復興に充てる。

交通や通信といったインフラの整備に向けた公共投資が中心になるとみられる。需要創出をねらった事実上の景気対策である。

国債の増発で、2023年の財政赤字国内総生産GDP)に対する比率が3.8%まで高まる。中国政府が財政規律を守るために掲げてきた「3%」の目標を大きく上回り、新型コロナウイルスへの対応で赤字が拡大した20年の3.7%も超す。

中国経済は、深刻な不動産不況を起点とする需要不足で苦境が続いている。生産が持ち直すなど底打ちの兆しもあるが、不動産や地方債務の問題は解決の糸口がみえないままだ。先行きを楽観できる状況にはない。

習政権はこれまで、需要不足を穴埋めするための財政出動に慎重だった。08年のリーマン危機後に打ち出した4兆元(当時のレートで57兆円)の景気対策が、中国の債務問題を大きくするきっかけになったからだ。

中国が年度の途中で大幅な予算の修正に踏み込むのはめずらしい。習政権が異例なかたちで追加の財政出動を打ち出したのは、景気の現状に強い危機感を抱いている表れだろう。

お金の使い道には細心の注意を払ってもらいたい。公共投資は本当に必要な災害対策や生活インフラに絞り、消費刺激にも軸足を置くべきだ。効率の悪い投資を膨らませれば、債務の拡大を招くだけになってしまう。

今回の措置で、景気低迷の根っこにある不動産業や地方債務の危機的な状況が改善に向かうわけではない。習政権は問題を先送りせず、公的資金の投入を含めた抜本策を検討すべきだ。

27日に亡くなった李克強前首相は、市場経済化の徹底で民間の活力を引き出す政策の実現をめざした。中国経済を新たな成長軌道に乗せるためには、李氏の精神も忘れてはならない。