バンブーズブログ

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[社説]資産勘案など社会保障負担の改革急げ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/12/10 2:00
 
年齢で線引きせずに能力に応じた負担を求める仕組みが求められる
少子高齢社会を乗り切るために早急に実現すべきだろう。政府が社会保障改革の工程案で検討課題として示した、医療・介護の負担に金融資産の保有状況を反映する仕組みのことである。

厚生労働省国民生活基礎調査によると、世帯主が65歳以上の世帯の平均貯蓄額は2022年に1625万円。19年の1277万円から27%増えた。3000万円超の世帯も14%に上っている。

ところが今の制度では、医療や介護の利用者負担に預貯金や株式の保有状況は反映されない。所得が一定以上の世帯に医療費や介護費の2〜3割を求める仕組みはあるが、介護利用者の約9割、医療を受ける75歳以上の患者の約7割は1割負担で済んでいる。

保険料負担も同様だ。後期高齢者医療制度の保険料算定に保有資産を勘案する仕組みはない。65歳以上の介護保険料でも固定資産税の納付記録を基に不動産の保有状況を一部で反映するだけだ。

社会保障の受益は高齢者に集中し、負担は現役世代が大半を担う。こうした受益と負担の構図を見直し、少子高齢社会に適した形にするのが政府が掲げる全世代型社会保障の目標だ。

高齢を理由に一律に弱者扱いするのではなく、必要な費用は負担能力に応じて分担する。こうした理念に照らせば、資産を勘案して医療や介護の負担を決めるのは当然だといえる。

導入するには世帯ごとの保有資産を効率的に把握する仕組みが必要だ。マイナンバーに金融口座の情報をひも付ける改革を政治主導で実現すべきだ。政府は資産勘案を28年度までの検討課題としているが、できる限り早期の適用を目指してほしい。

政府が公表した社会保障の改革工程案は3つの時間軸に分けて改革項目を整理した。24年度に取り組む検討項目として、介護保険で2割負担を求める所得の範囲を広げることや、老人保健施設や介護医療院で相部屋を利用する人に室料の負担を求めることを盛った。

ただ医療・介護で3割負担を求める所得の範囲を広げる改革を28年度までの中期的な検討課題と位置づけるなど、負担と給付の見直しは小幅かつスピードも遅い。

25年以降は「団塊の世代」の全員が75歳以上となり、医療・介護のニーズが一段と増大する。現役世代の負担増を抑える改革は時間との闘いだと認識すべきだ。