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2023/12/24 2:00
少子化対策の「ラストチャンス」と政府は位置づけた
政府は新たな少子化対策「こども未来戦略」を閣議決定した。少子化を日本が直面する「最大の危機」と位置付け、具体策である加速化プランは3.6兆円規模となる。若い世代が安心して結婚や出産の希望をかなえる一歩にしたいが、課題はなお多い。
なによりまず、財源だ。政府は医療保険料のルートを使い、2028年度時点で年間1兆円を「こども・子育て支援金」として集める予定だ。再分配の効果を高めるには幅広い国民が負担能力に応じて協力する仕組みが要るが、支援金は応能負担の視点が弱い。
高齢者にも負担を求める制度にしたのは良いが、総人口の15%超を占める75歳以上の負担分は7%程度にとどまる。所得だけでなく、資産の保有状況に応じて世帯の負担額を決める仕組みを導入するなどして現役世代の負担軽減につなげていくべきだ。
政府は支援金制度がフル稼働する28年度までに歳出改革を徹底するとし、岸田文雄首相は「実質的な追加負担は生じさせない」と繰り返してきた。この方針を巡り、政府は23〜24年度に実質的な社会保険負担の軽減効果が0.33兆円あるとした。
だがこの算定には無理がある。政府は医療従事者らの賃上げで医療・介護費が増える分を、国民一般の賃上げ率の範囲内なら「負担」に含めないと説明している。
そんなつじつま合わせではなく、医療費や介護費の抑制に直結する歳出改革に取り組むべきだ。これを欠けば現役世代の負担感はどんどん強まり、出産意欲にも響きかねない。
対策の中身にも注文がある。新たなプランは児童手当の高校生までの延長や所得制限の撤廃、多子世帯の大学無償化などの経済的支援を多く盛り込み、開始時期も明記した。ただ少子化の大きな要因は未婚化だ。若い世代が自らの就労で経済基盤を安定させるための支援こそ急ぐべきだ。
いったん非正規になるとなかなか抜け出せない硬直的な労働市場の改革や、正規・非正規の処遇格差の是正などが重要になる。
これらの施策は、若い世代だけでなく幅広い世代に関わる。子育てに時間を割けない長時間労働の慣行や、女性に偏る家事・育児分担を変えていくことも同様だ。今の日本の社会のあり方自体が、少子化を招いている。そうした危機感を社会全体で共有したい。