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[社説]FRBの転換が生む環境変化に備えよ

[社説]FRBの転換が生む環境変化に備えよ
 
 
#社説 #オピニオン #金融政策
2023/12/15 2:00
 
FRBは2024年に3回の利下げを想定するが……(13日の記者会見、ワシントン)=ロイター
米連邦準備理事会(FRB)のインフレとの闘いが最終局面を迎えている。パウエル議長が利下げ時期の検討を始めたと表明し、議論すら時期尚早だとしてきた従来の姿勢を大きく転換した。

すでに米国内外の市場が強く反応したように、その成否は世界の経済や市場に甚大な影響を及ぼす。FRBは物価安定の総仕上げにあたり、細心の注意を払って情勢判断や市場との対話に努める必要がある。日本も政策転換に伴う環境の急変に備えるべきだ。

13日に終えた米連邦公開市場委員会FOMC)は政策金利の据え置きを決め、パウエル氏は記者会見で利上げ終結の可能性を表明した。急激な物価高に対応した昨春以降の米利上げ局面は7月を最後に幕を閉じた可能性が高い。

焦点は利下げに移った。FOMCメンバー予想の中央値で示す新しい金利見通しでは、2024年中に3回の利下げを実施する姿となった。パウエル氏はいつ金融緩和に転換するかという問題が「視野に入ってきた」と述べ、今回の会合でも議論したと明かした。

インフレの明確な減速を理由に、足元の物価見通しを引き下げた。景気の軟着陸も見込む。

もっともFRBの見立て通りに景気や物価が動くとは限らない。政策金利の見通しも過去に修正を繰り返してきた。新型コロナウイルス流行下のインフレ圧力を当初、過小評価した経緯もある。

この先、過去の金融引き締めの影響があらわになり、景気が腰折れするリスクも無視できない。物価や景気を予断を持たず分析し、柔軟な対応を望みたい。

市場は景気の軟着陸と利下げの大幅な進行を織り込み、楽観に傾いている感もある。13日の米市場でダウ工業株30種平均は史上初めて3万7000ドル台に乗せ、長期金利は急低下した。市場が経済活動を刺激し、インフレが再燃する心配もある。注視が必要だ。

日本への影響は単純ではない。外国為替市場では米金利低下で円高・ドル安が進んだ。輸出企業の収益悪化が懸念され、日経平均株価は米株高にもかかわらず下落した。円高で物価高が和らげば家計には恩恵が及ぶが、大企業の賃上げ原資が細るリスクと裏表だ。

米利下げが進む場合、日銀が金融緩和策の正常化をどう進めるのかも難題になる。米政策転換の影響をよく見極め、政策運営や企業経営に生かしてほしい。