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2023/12/15 2:00
家宅捜索のため、柿沢未途衆院議員の自宅に向かう東京地検特捜部の係官ら(東京都江東区)=共同
東京地検特捜部が14日、前法務副大臣の柿沢未途衆院議員の議員会館事務所や自宅を公職選挙法違反(買収)容疑で家宅捜索した。
自民党派閥の政治資金パーティーの「裏金」をめぐる疑惑で、国政が混乱するさなかの強制捜査である。国民の政治不信はいっそう深まろう。「政治とカネ」の実態をつまびらかにする徹底的な捜査が必要だ。
柿沢氏は4月の東京都江東区長選で、木村弥生前区長を当選させる目的で地元区議らに現金を配った疑いが持たれている。同区長選は保守分裂の激戦となり、柿沢氏は木村氏を支援していた。買収に加え、選挙期間中に有料インターネット広告を掲載した問題への関与も疑われている。
柿沢氏は「陣中見舞いだった」などと買収の意図を否定しているようだ。しかし選挙前に現金を配る行為そのものに首をかしげざるを得ない。
2019年の参院選広島選挙区での大規模な選挙買収事件は記憶に新しい。同事件では河井克行元法相らの有罪が確定した。今回の事件はなお捜査中だが、容疑が事実なら、選挙の公平性を損ねる悪質な犯罪だ。資金の出所などを含め、全容を解明してほしい。
家宅捜索を受け、柿沢氏は同日、自民党に離党届を出し、受理された。離党したからといって「議員個人の問題だ」と自民党がほおかむりをしていいはずがない。法務副大臣に起用した岸田文雄首相の任命責任とともに、自民党の責任も重い。
政治資金パーティーをめぐって特捜部は近く、政治資金規正法違反の疑いで安倍派(清和政策研究会)側の強制捜査に乗り出す方針だという。派閥幹部の事情聴取も進めるとみられ、疑惑の解明に向けた動きが本格化する。
捜査機関が不正にメスを入れ、それから議員が改革の重い腰をあげる。その繰り返しでは、いつまでたっても国民の信に足る政治は生まれない。政治家の自浄能力が問われている。