バンブーズブログ

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[社説]日銀は出口に備え対話入念に


 
 
#金融政策 #金融 #社説
2023/12/21 2:00
 
日銀は市場との対話力が試される(19日の金融政策決定会合後の植田和男総裁の記者会見)=共同
日銀は金融緩和策の正常化をにらみ、賃金と物価の好循環が定着するかを見極める重要な局面に入った。日銀の分析力と市場との対話力が本格的に試される。

19日に終えた金融政策決定会合では緩和策の維持を決めた。植田和男総裁は記者会見で、賃金上昇を伴う物価上昇の目標実現へ「好循環が強まっていくか、なお見極めていく必要がある」と語った。

一方で企業の収益改善は続き、来春の労使交渉で大幅な賃上げが継続する展望も開けつつある。植田氏は「見通しが実現する確度は引き続き少しずつ高まってきている」とも述べ、「もう少し情報を見たい」との意向を示した。

個人消費は値上げ続きで停滞感が拭えない。海外では米連邦準備理事会(FRB)の早期利下げ観測が台頭し、米景気や円相場の先行きに不透明感が漂う。

問題は積極的な賃上げや内需に根ざす物価上昇の持続力をどう見極め、市場と共有するのかだ。

植田氏は7日の国会で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言し、市場の正常化への思惑を高めた。会見では政策的な意図を否定したが、対話の難しさを改めて示した。

20日の株式市場で日経平均株価は一時バブル崩壊後の高値を上回った。米株高のなか、日銀の早期正常化への警戒が和らぎ、円高一服もあって買いが勢いづいた。出口に向けては、株価や円相場の動きに注意を要する。

民間の活力を最大限に引き出すには、お金が経済の実態に沿って必要なところに適切な条件で流れるよう、市場機能を生かした金利体系への移行が欠かせない。

だが「金利のある世界」は多くの市場参加者にとっては未体験だ。歴史的な転換となるだけに、市場は不安定になりやすい。

日銀は経済や物価の現状をこれまで以上に綿密に分析し、政策変更の時機を慎重に探ってほしい。そのうえで出口に際して無用な混乱を招かぬよう、細心の注意で市場との対話に取り組むべきだ。