バンブーズブログ

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[社説]日銀は緩和再修正を機に出口への備え万全に


 
 
#社説 #オピニオン #日銀政策決定会合
2023/11/1 2:00
 
日銀の植田総裁は物価目標の実現へ「確度が少し高まってきている」と語った(31日の金融政策決定会合後の記者会見、日銀本店)
日銀が再び金融政策運営の柔軟化に動いた。7月に続いて「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」と呼ぶ長期金利を低く抑える緩和策の枠組みを修正し、金利が一時的に1%を超えることを容認する。

内外の経済・金融環境が大きく変化しており、柔軟な政策運営が一段と重要な局面になっている。再修正は妥当な判断だろう。これを機に、より精緻で丁寧な情勢判断や市場との対話につなげ、マイナス金利の解除など緩和策の出口への備えを万全にしてほしい。

YCCについては7月に「厳格な上限」と位置付けた1.0%の長期金利の水準を緩やかな「メド」に変え、金利上昇を力ずくで抑えようとする仕組みをやめた。

米国では強い経済指標などを受けて長期金利が一時5%台に到達し、日本の金利に想定以上の上昇圧力がかかった。今の仕組みだと大量の国債購入によって債券市場がゆがみ、円安の一段の加速など急変動を招くおそれがあった。

植田和男総裁は31日の記者会見で、長期金利について「1%を大幅に上回るとはみていない」と述べ、機動的な国債購入を通じて金利の急騰を防ぐ意向を示した。円相場の動向もにらみつつ、市場全体の安定をめざしてほしい。

市場の安定は今後の焦点である「賃金と物価の好循環」を実現するうえでも大きな意味を持つ。

植田氏は目標とする賃金上昇を伴う物価の緩やかな上昇の実現が「十分な確度をもって見通せる状況にはなお至っていない」と指摘し、今回の再修正が出口に直結する措置ではないと語った。

その一方で「実現の確度が少し高まってきていることは事実」とも強調し、出口に向けて手応えをつかみつつある様子をみせた。

今回の「経済・物価情勢の展望」では2024年度の物価上昇率見通しを2.8%とし、前回7月の1.9%から大幅に引き上げた。原油高や経済政策の延長といった要因が大きいものの、その後も物価の基調は「目標に向けて徐々に高まっていく」と明記した。

24年の春季労使交渉を巡っては連合が5%以上の賃上げ要求を掲げ、企業側にも今年に続き積極的に対応する機運がみられる。

今年並みの賃上げが達成できるのか。四半世紀に及ぶ経済停滞から脱するための分岐点だ。日銀は企業収益や海外情勢を含め丹念に分析し、市場と共有してほしい。